そのタイトルに惹かれ手に取った本は、8歳でアスペルガー症候群と診断され、中学生で学校に行くのをやめる決意をした当時15歳の岩野響くんとそのご両親の、経緯や気持ちを綴ったお話でした。
子供が、無事に、幸せに生きていくことを願わない親はいないと思う。どんなふうに?それは本人が考えることだけど、生きていく、そのベースになる力をつけてやりたいという気持ち。
ご両親のコーヒー好きに影響を受けて自分も好きになったという響くんは、焙煎機を手にいれ焙煎を始めます。最初は焦げた、または生焼けのコーヒーでお父さんとお母さんにも美味しくないと言われていましたが、1年がたつころ「うん、美味しいよ」と言われるようになったそうです。
その後、大坊珈琲店の大坊さんと話すことでコーヒーそのものを体現し、カフェ・ド・ランブルの関口さんの焙煎する姿やオールドコーヒーに魂を揺さぶられ、さらに自分のコーヒーを探し始めます。
焙煎の深さ。コーヒーを飲む人の時間、表情。コーヒーを通して、響さんのイメージしたもの。
そんなある日、お母さんの口から出た「お店やっちゃいなさいよ」の一言。
もともと自作の服で洋品店を営んでいたご両親は、お店の一角を開けてコーヒー店をやることになったのですが、行動力のあるお母さんが先に告知をしオープンまでの時間はなんと三日!
三日間で、ご両親は響くんがびっくりするくらいの手際で、店舗デザイン、照明、テーブル、ガス工事、塗装、コーヒー豆のパッケージまで作ってしまいました。
思いついたことは行動したらほんとうにできてしまうし、行動しなければできない。響くんはあらためて思います。
悩んで、迷って、もがきながら、自信や達成感を少しずつ得ていく、若き焙煎士とその家族。
コーヒーという杖。響くんと家族が見つけた生きていくための道具が、誰にでもあるはずだというメッセージとして、私は受け取りました。
参考:「コーヒーはぼくの杖〜発達障害の少年が家族と見つけた大切なもの」
著 岩野響・開人・久美子
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Taiami