コーヒーコラム "Brown Page"
コーヒーにまつわる日々のコラム、"Brown Page"(ブラウンページ)。
毎年10月1日コーヒーの日には、一冊の茶色い本、"Brown Book"(ブラウンブック)として発行しています。

  • title
    想像力は刺激されねばならないのである
  • date
    2022年06月17日
  • category
    coffee column

イタリアのアーティストでブルーノ・ムナーリという人がいます。

絵本作家、教育者、デザイナーなどさまざまな分野で活躍した人。

「子供の心を、一生ずっと自分の中に持ち続ける!」という精神で、好奇心や想像力の大切さ、そして幼い頃の遊びや記憶がその後の人生にどう影響するか、それが情報を与える周りの大人たちにかかっているのだということを発信しています。

ムナーリはたくさんの書籍や作品を残していますが、「保存されるべきはモノではない」と言います。

大切なのはむしろそのやり方、企画を立てる方法、再びやり直すことができるようになるための柔軟な経験値なのだと。

”好奇心を最大限に利用しよう。
子供は大人たちが何かをやり始めると、何をしているのか知りたがり、後で自分でもやってみたくなるもの。
子供にとって何か教えるには、これが最も近い道のりとなる。
多くの言葉もいらなければ、組み立てる必要もない。
子供はすでにそこにいて、何が起こるかワクワクしているんだから!”

これはきっと子供のためだけのメッセージではないですよね。

好きなことに没頭している人、楽しそうに何かをしている人がいれば、大人だって興味を惹かれるもの。

ワクワクすることは全ての原動力!

頭の中はいつも自由で、柔軟で、準備の整った状態に。

大人になった自分がほんのちょっとでも好きなもの、興味のあるものはなんだろう?

あまり詳しくないからなんて声を小さくする必要はありません。

コーヒーを片手に、ぜひその世界観を覗いてみてほしいアーティストです。

ちなみにムナーリ、子供の心を持ったまま九十歳と超長生きしました。

参考:「ファンタジア」著 ブルーノ・ムナーリ 訳 萱野有美

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chai


  • title
    人生で最高の一杯
  • date
    2022年06月05日
  • category
    coffee column

当店で年に一度発行している珈琲文芸誌ブラウンブックで、一度だけ、お客様にコーヒーのエピソードを募集し特集を作ったことがあります。

第5号、テーマは「人生で最高の一杯」。

どれだけ集まるかドキドキしていたけれど、予想していたよりもたくさんの、それも素敵なエピソードが集まりました。

子供の頃、両親が淹れてくれたコーヒーの記憶。

小さい頃に行った喫茶店の話。

旅先で飲んだ異国のコーヒー。

飲む機会を失ったと思ったけれど奇跡的に飲むことができた一杯。

大切な人のために淹れる、または大切な人が淹れてくれる毎朝のコーヒー。

趣味のアウトドアで自然に囲まれて飲むコーヒー。

みなさん本当に文章もお上手で、集まったエピソードを読んで真っ先に、そして何より元気と幸せをもらったのはスタッフたちでした。

コーヒーは当たり前の日常の中にある。コーヒーを飲むという単調な行動の傍らには、それぞれの流れ続ける日々がある。いい日もあれば、なんて悪い日なんだろう!って日も。

人生を変えるほどでなくても、その日一日、その瞬間だけでも、何も考えずにただ美味しいと思っていただければ、コーヒーに携わる人たちはこんな嬉しいことはないでしょう。

私が初めてコーヒーを飲めるようになったのは、喫茶店で働き始めた時でした。

店長の、自分の店のコーヒーに対する絶対的な自信と、仕事に対する止まらない情熱が、初めてのコーヒーに付加価値を与えてくれました。

すべての開店準備を終えたら、練習のためにも自分のためにコーヒーを淹れる(淹れても”いい”だったかな)と言う約束がありました。ネルドリップの水をしぼり、サーバーに乗せて、挽きたての粉を入れ、細口のドリップポットから流れ出るお湯をゆっくり、集中して。開店前にひとりで淹れる朝のそのコーヒーが、私には最高の一杯でした。

これからまだまだ出会えるであろう最高の一杯。

ささやかな日常に愛のあるコーヒーを。

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chai