コーヒーは、植物で、生もので、イキモノです。
とは言っても、私たちがふだん出会うのは、焙煎された後の茶色い豆。この豆という言い方も、実は正しくはありません。
コーヒーは、<マメ科>ではなく<アカネ科>で、コーヒーノキ属に属しています。コーヒーノキ属って、なんかそのまんまで可愛いですね。
この木にジャスミンのような香りの白い花が咲き、コーヒーチェリーと呼ばれる赤い(または黄色い)実をつけます。その中に入っている種子がコーヒー豆です。通常一つの実の中に種子がふたつ。
ということは!?コーヒー豆は、実はマメではなく、タネなのです。
バイヤーでも焙煎士でもない私が、実をつけるほどに成長したコーヒーの木に出会ったのは人生で三度です。
一度目は沖縄のコーヒーファームです。
コーヒーは赤道近くの暖かいところで育つ植物です。沖縄には、約百五十年ほど前にはコーヒーの木が持ち込まれていたようです。久しぶりに調べてみると、今は観光農園や、農園キャンプをやっているところなどもありびっくりしました!自分で摘んだコーヒーでモーニングコーヒーを淹れる、なんて絶対やってみたい!!
話はそれましたが、学生時代の仲間と行った沖縄。誰もそこまでコーヒーに思い入れはなかったけど、わがままを言って連れて行ってもらいました。
沖縄北部まで長いドライブ。ああ。時間ない。一応電話してみよう。とわーわー言いながら、着いたらやはり営業時間が過ぎていました。でも、待っていたお店の方が親切に対応してくれ、この農園の成り立ちのことなどを教えてくれました。コーヒーの葉のお茶もいただきました。
十年もののコーヒーの木を見せていただいたのですが、時すでに最後の日の光が沈んだくらいの夕暮れというか夕闇。コーヒーチェリーが闇にぼやーっと浮かび上がっていました・・・。でも、息せき切らせて辿り着いた沖縄の、そのぼやーっとしたコーヒーの木が、私にとっては、コーヒーの木と初めて出会った大切な思い出になりました。
二度目はコーヒーと妖怪の聖地、インドネシアのバリ島で。
ハニームーンというやつで行ったのですが、ガイドさんに連れて行ってもらった農園は、カカオや他の植物も育てているところでした。
コーヒー単体で育てている区画もあったけれど、山の中に色々な草木が生えていて、その中にコーヒーの木がひょっこり現れたりしたのが印象的。植物の一つなんだよなぁ。きっとこうやって野生に生えていたんだなぁというしみじみした気持ちになりました。
ジャコウネコも寝ていました。
たぬきみたいな顔をしたこの動物がコーヒーチェリーを食べると、果実が消化され種子(コーヒー豆)がフンと一緒に出てきます。それを綺麗に洗って作られる豆は「コピルアク」と呼ばれます。
鍋でコーヒー豆を炒る、カラフルな模様の服を着たおばあさんもいました。
連れは農園の人たちとコーヒーと煙草で一服。そういうふうに人が一緒にリラックスする時間は、国も言葉も超えるという風景を見ているようでした。
三度目、それはまさかの実家でした。
数あるアロエやクジャクサボテンにまぎれて、冬の寒さに何度も弱りながらも、ヒョロヒョロとのびたコーヒーの木の鉢植えがありました。
ある日、母から「コーヒーに花が咲いて実がなった!」と電話が来たのです。
かけつけると、そのやせっちょのコーヒーの木に、本当に白い花と、沖縄やバリで見たのと同じまっ赤なコーヒーチェリーが三つ、ついていました。感動してしばらく眺めたあと、一つの実を割ってみました。
中には向かい合った、ぬるぬるした二つの種。なんて可愛い。赤ちゃんなのに、もうコーヒー豆の形をしています。コーヒー豆は乾燥させて焙煎して飲むんだと親に偉そうに講釈たれながら、出窓のところで数日乾燥させることにしました。しかしいつしか忘れ去られ、その二粒はどこかに行ってしまいました。
また実がつくといいなぁ。お母さん、来年もひとつよろしくお願いします。
そんなこんなでコーヒーの木との思い出を綴ってみました。
最後に、コーヒーの木の花言葉を。
「一緒に休みましょう」
忙しい時もコーヒーと一息、いい時間を!
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Chihiro Taiami