Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    ピエロと夏のはじまり
  • date
    2023年07月15日

ピエロに会いました。

炎天下の中、地元のお祭りで目に入った、トランクを持って颯爽と歩く、赤に白にピンクに黄色、派手な衣装。

途中で手に持っていたトランクが動かなくなる。おどけた表情で前へ後ろへ引っ張るピエロ。

ああやっと動いた。立ち去るピエロは人混みに紛れて見えなくなる。次に会ったのは、飲食テーブルの並ぶスペースの一角で、風船の人形を子供達に作っているところ。

作りながらわざと風船をぶつけたり、帽子を落としたり。恥ずかしがる子の真似をしたり、列に並んでいない子に急に作って渡したり。ピエロは優しいだけ、面白いだけじゃないのです。

草食動物並みの視野の広さと、笑えるぐらいの意地悪。

散々風船をぶつけられ、笑顔で帰ってきた子供達の背中越し、ピエロが私に向かって水分とらせてあげてね、とジェスチャーをした。

子供が「風船を渡すときピエロがつば垂らした」と腕を見せてきた。

違うよそれはつばじゃなくて汗だよ。ピエロも暑かったんだね。

作ってもらった風船をしっかり握りしめ、暑くてみんなでへとへとになって帰った。

家に着いてご飯を食べて、子供達はポッキンアイス、私はアイスコーヒーをがぶ飲みしていたら、あのピエロの顔がなぜだか浮かんできた。おどけていたけどなんだか寂しそうな顔。いや普通だったのかもしれない。派手な楽しいメイクだったから、ただの普通の表情がそう感じたのかな。

子供達は風船の盾と剣で嬉しそうに遊んでいる。女の子が、作ってもらったキティちゃんのステッキを、どこかに置いてきちゃったみたいと言う。あんなに握りしめてたのに笑

ピエロと出会った夏のはじまり。

今年はアイスコーヒーを飲むたびに、あのピエロを思い出しそうです。

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Chihiro Taiami

 

  • title
    はじめての焙煎
  • date
    2023年06月20日

ずっとやってみたかった。大坊珈琲さんの本を読んだ時から。

生豆とゴマ炒り器をネットで買った。焙煎って、手回しロースターとかちゃんとした機械が必要なのかと勝手にハードル高く思っていたけど、ゴマ炒り器とか、鍋でもできるみたい。とにかく生豆が色付いていくところを見たい。パチパチという、ハゼの音を聞いてみたい。

爆(は)ぜる、コーヒー豆の弾け飛ぶ音。

ある四月の晴れた日。北海道はまだ少し寒いのに、なぜ外でやってみようと思ったのか。台所でチャフが飛び散るのを警戒したというのも理由の一つだけど(チャフはコーヒー豆を焼いた時に出る薄皮のこと)なんとなく外でコーヒーの香りを感じたい、シチュエーション作りが8割かな?

庭にテーブルを出しコンロとザルとうちわと軍手を置いて、慌ただしく台所に戻って生豆を30g計量。ゴマ炒り器に入れ、バタバタと外へ。ドキドキしながら卓上コンロの火をつける。風が少しあり、しかも屋外で、コンロの青い炎はほとんど見えない。鍋をかざしてみる。

手網焙煎は、とにかく休まず鍋をゆすり続ける。と何かで読んだ。

やり始めてみると、本で読んだうろ覚えの知識はあっという間に風に飛んでいった。

まるで焙煎ごっこ。でもとっっっっても楽しい!!!

ゆすってみてるけど、ほんとに火ついてるかな?

あれ?なんか少し香ばしい匂いがしてきたぞ!

お向かいさんが出てきた。「あらー何してるのー?」

隣の家にもお客さんの車が停まった。

テーブルの横でベビーカーに乗せられ放置されていた10ヶ月の我が子もついに泣き出した。

「こんにちはー!コーヒー!焙煎してみてるん…」

そう言いかけた時、パチッ 

パチッ パチッ パチッ

あ、音がした!

もう興奮状態で、写真を撮ったり子供をあやしたり。ワタワタやっているうちに、また2ハゼのパチパチの音が始まった。豆はどんどん色が変わっていく。

こ、これは…さっきまでなんの豆だかわからなかったものがコーヒー豆の色になっていく…

感動に震えていると、あっという間に茶色を通り越して黒い焦げ色になっていった。慌ててザルにあけても、ザルの中でもどんどん色が変わっていく。うちわで仰いで。まだかろうじて茶色の生きてる豆もある。

茶色と黒の入り混じった焦げ焦げのコーヒー豆だけど、初めての焙煎完了に、町内中の人に「豆できたよー!」と叫びたい気分。

確か焙煎直後より数日置いた方がおいしい。何かに書いてあったな。

でもそんなこと今はいい。衝動の前に知識は必要なし!

ザルを持って家に入り、飲んでみる。初めての焼きたて挽きたてコーヒー。焦げの味はだいぶするけど、ちゃんとコーヒーだ。自分で焼いたコーヒー、おいしい!

やってみる、経験する。その一歩で世界は全然違う!!

四月の肌寒い日、焦げコーヒー豆は小さな一歩だったけど、「焙煎」が、イメージから立体になった瞬間だった。

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Chihiro Taiami