ピエロに会いました。
炎天下の中、地元のお祭りで目に入った、トランクを持って颯爽と歩く、赤に白にピンクに黄色、派手な衣装。
途中で手に持っていたトランクが動かなくなる。おどけた表情で前へ後ろへ引っ張るピエロ。
ああやっと動いた。立ち去るピエロは人混みに紛れて見えなくなる。次に会ったのは、飲食テーブルの並ぶスペースの一角で、風船の人形を子供達に作っているところ。
作りながらわざと風船をぶつけたり、帽子を落としたり。恥ずかしがる子の真似をしたり、列に並んでいない子に急に作って渡したり。ピエロは優しいだけ、面白いだけじゃないのです。
草食動物並みの視野の広さと、笑えるぐらいの意地悪。
散々風船をぶつけられ、笑顔で帰ってきた子供達の背中越し、ピエロが私に向かって水分とらせてあげてね、とジェスチャーをした。
子供が「風船を渡すときピエロがつば垂らした」と腕を見せてきた。
違うよそれはつばじゃなくて汗だよ。ピエロも暑かったんだね。
作ってもらった風船をしっかり握りしめ、暑くてみんなでへとへとになって帰った。
家に着いてご飯を食べて、子供達はポッキンアイス、私はアイスコーヒーをがぶ飲みしていたら、あのピエロの顔がなぜだか浮かんできた。おどけていたけどなんだか寂しそうな顔。いや普通だったのかもしれない。派手な楽しいメイクだったから、ただの普通の表情がそう感じたのかな。
子供達は風船の盾と剣で嬉しそうに遊んでいる。女の子が、作ってもらったキティちゃんのステッキを、どこかに置いてきちゃったみたいと言う。あんなに握りしめてたのに笑
ピエロと出会った夏のはじまり。
今年はアイスコーヒーを飲むたびに、あのピエロを思い出しそうです。
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Chihiro Taiami