寒くなって室内で過ごすことが増えると、コーヒーを飲む量が一気に増えた。
ドリップでは追いつかず、キッチンに置いてあるインスタントコーヒーの瓶を大きなものに替えた。暇さえあればバッサバッサとカップに粉を入れまくっている。瓶の中身が減ってくると、ストックを買うまで焦りすら感じて、完全にインスタントコーヒー中毒だ。
頻度はインスタントコーヒーほどではないけど、豆を挽いて飲むコーヒーはやっぱり格別。外出して帰ってきた後も、残っていた香りが玄関まで漂ってきて幸せな気持ちになる。
向かいに住む兄弟が、お父さんが車のタイヤを替える姿を見ている。お兄ちゃんはこの前まで小学生だと思ってたのに、あっという間に高校生だ。弟もずいぶんたくましくなった。
そんな様子を、カップのコーヒーを混ぜながら窓からチラ見している。
秋の終わりと冬の始まりは、不思議なふわふわが飛ぶ。
雪虫。ケサランパサラン。
雪虫って、もう冬を告げるものとしてこれ以上のものはないんじゃないだろうか。お尻にあんな可愛い青と白のふわふわをくっつけて、雪の降る直前に現れるなんて。
幼い頃の自分を含め、子供はみんな雪虫をつかまえる。メイがまっくろくろすけを手のひらでパチンとつかまえるみたいに。
それからケサランパサラン。
ケサランパサランは、妖怪、または幸運をもたらすと言われている謎の物体で、江戸時代には桐の箱の中でおしろいを与えながら飼ったりしたそうだ。直径4〜5cmくらいの、うさぎのしっぽのような白いふわふわ。
でも実は、私が見かけるのは真ん中に、雫型の種子が付いている。大きいたんぽぽの綿毛みたい。だからきっと何かの植物の種子で、本当はケサランパサランじゃないけど、私はこれを見かけるのが好きで、妖怪も好きだし、勝手にこう呼ばせてもらっている。
以前、朝の雪かきのあとのコーヒー最高!そんな投書を新聞で読み、冬が近づいて来るたびに思い出す。
秋からじわじわ需要が高まってくるコーヒーだけど、その湯気や香りに、愛情まで感じてしまうのは冬だろう。
もうそろそろそんな季節を、冬の使者たちと一緒に心待ちにしている。
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Chihiro Taiami