Coffee Column
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。

年: 2023年

  • title
    七年後の夏休み
  • date
    2023.08.20

今年の夏は大きな計画を立てないことにしていたら、次々と来客が来たり、思いつきで日帰り旅行をしたり、子供たちと水鉄砲や花火や少年漫画を読むなど、何てことないけどいい夏休みになった気がする。

そんななか約七年ぶりに、店主が家族と共に我が家に会いにきてくれました。

一緒に働いていた頃はお互い20代から30代前半。夢、恋愛、仕事、コーヒーへの愛、海外セレブのゴシップなどを毎日熱く語り、「マイホームを持つ意味がわからない」とかなんとか言って、結婚とか家庭とか、そう言うものよりもっとほかの、好きなものや興味のあることでいっぱいの日々でした。

そんな二人が今や母ちゃん。

私が「店長」と呼ぶと娘も「てんちょー」と呼ぶ(この呼び方をする人は今はいないらしい)

店長がペーパードリップでコーヒーを淹れていると、六歳の息子が「オレもやりてえ」と即席コーヒー教室が始まる(「いいですよー」の口調、私が働き出してドリップ教えてもらった時と変わらないなー)

店長の子供は虫かごの中の「キマワリ」という虫を大事に抱えている(虫はいろんなこと教えてくれる一番の先生なんだよね、本当に)

子供同士オレオのクッキーのブロックを向かい合ってニコニコ食べて遊んでいる(本物あげればよかったな)

うちの実家から、近くの農家で買ってきた朝もぎのとうきびと枝豆の差し入れが来る(朝もぎ即茹でが本当に美味い)

せっかく来てくれたんだから名物の焼き鳥でも買っておけばよかったと思っていたら父ちゃんが買ってきてくれる(近所の行ったことない焼き鳥屋さんで持ち帰りしようとしたら、一見さんの持ち帰りお断りの雰囲気)

夜はみんなでお絵描き大会。狭い正方形のコタツを囲んで、こどもたちがカブトムシやとうきびを思い思いに描く(この日を機に息子のカブトムシの絵は足の先に爪が描かれめちゃめちゃリアルになる)

花火の時に、火花に照らし出された店長とこどもの姿や、お風呂場から聞こえてきた声にしみじみ(お母さんなんですねぇ)

早朝には店長の旦那さんが初対面のうちのおじいちゃんと一緒に釣りに行く(こういう不思議な出会いが楽しいね)

家族ぐるみを超え、もはやおとなもこどももなく、個人と個人が自由に行き交っているような空間でした。

大漁で帰ってきた釣り人たちの満面の笑み。

チラシの裏紙に絵を描いていた時のみんなの表情。

近所のおじさんがくれたクワガタを大事に虫かごに入れて、手を振りながらも虫に釘付けだった帰りの車のこどもたち。

いろんな顔が浮かびます。

こんな日常の中に連なって珈琲と仕事がある。モノクロの飲み物が彩りを加えてくれる。

なんにせよ登場人物が増えましたね笑

また会おうね!

-50-

Chihiro Taiami

  • title
    ピエロと夏のはじまり
  • date
    2023.07.15

ピエロに会いました。

炎天下の中、地元のお祭りで目に入った、トランクを持って颯爽と歩く、赤に白にピンクに黄色、派手な衣装。

途中で手に持っていたトランクが動かなくなる。おどけた表情で前へ後ろへ引っ張るピエロ。

ああやっと動いた。立ち去るピエロは人混みに紛れて見えなくなる。次に会ったのは、飲食テーブルの並ぶスペースの一角で、風船の人形を子供達に作っているところ。

作りながらわざと風船をぶつけたり、帽子を落としたり。恥ずかしがる子の真似をしたり、列に並んでいない子に急に作って渡したり。ピエロは優しいだけ、面白いだけじゃないのです。

草食動物並みの視野の広さと、笑えるぐらいの意地悪。

散々風船をぶつけられ、笑顔で帰ってきた子供達の背中越し、ピエロが私に向かって水分とらせてあげてね、とジェスチャーをした。

子供が「風船を渡すときピエロがつば垂らした」と腕を見せてきた。

違うよそれはつばじゃなくて汗だよ。ピエロも暑かったんだね。

作ってもらった風船をしっかり握りしめ、暑くてみんなでへとへとになって帰った。

家に着いてご飯を食べて、子供達はポッキンアイス、私はアイスコーヒーをがぶ飲みしていたら、あのピエロの顔がなぜだか浮かんできた。おどけていたけどなんだか寂しそうな顔。いや普通だったのかもしれない。派手な楽しいメイクだったから、ただの普通の表情がそう感じたのかな。

子供達は風船の盾と剣で嬉しそうに遊んでいる。女の子が、作ってもらったキティちゃんのステッキを、どこかに置いてきちゃったみたいと言う。あんなに握りしめてたのに笑

ピエロと出会った夏のはじまり。

今年はアイスコーヒーを飲むたびに、あのピエロを思い出しそうです。

-49-

Chihiro Taiami

 

  • title
    はじめての焙煎
  • date
    2023.06.20

ずっとやってみたかった。大坊珈琲さんの本を読んだ時から。

生豆とゴマ炒り器をネットで買った。焙煎って、手回しロースターとかちゃんとした機械が必要なのかと勝手にハードル高く思っていたけど、ゴマ炒り器とか、鍋でもできるみたい。とにかく生豆が色付いていくところを見たい。パチパチという、ハゼの音を聞いてみたい。

爆(は)ぜる、コーヒー豆の弾け飛ぶ音。

ある四月の晴れた日。北海道はまだ少し寒いのに、なぜ外でやってみようと思ったのか。台所でチャフが飛び散るのを警戒したというのも理由の一つだけど(チャフはコーヒー豆を焼いた時に出る薄皮のこと)なんとなく外でコーヒーの香りを感じたい、シチュエーション作りが8割かな?

庭にテーブルを出しコンロとザルとうちわと軍手を置いて、慌ただしく台所に戻って生豆を30g計量。ゴマ炒り器に入れ、バタバタと外へ。ドキドキしながら卓上コンロの火をつける。風が少しあり、しかも屋外で、コンロの青い炎はほとんど見えない。鍋をかざしてみる。

手網焙煎は、とにかく休まず鍋をゆすり続ける。と何かで読んだ。

やり始めてみると、本で読んだうろ覚えの知識はあっという間に風に飛んでいった。

まるで焙煎ごっこ。でもとっっっっても楽しい!!!

ゆすってみてるけど、ほんとに火ついてるかな?

あれ?なんか少し香ばしい匂いがしてきたぞ!

お向かいさんが出てきた。「あらー何してるのー?」

隣の家にもお客さんの車が停まった。

テーブルの横でベビーカーに乗せられ放置されていた10ヶ月の我が子もついに泣き出した。

「こんにちはー!コーヒー!焙煎してみてるん…」

そう言いかけた時、パチッ 

パチッ パチッ パチッ

あ、音がした!

もう興奮状態で、写真を撮ったり子供をあやしたり。ワタワタやっているうちに、また2ハゼのパチパチの音が始まった。豆はどんどん色が変わっていく。

こ、これは…さっきまでなんの豆だかわからなかったものがコーヒー豆の色になっていく…

感動に震えていると、あっという間に茶色を通り越して黒い焦げ色になっていった。慌ててザルにあけても、ザルの中でもどんどん色が変わっていく。うちわで仰いで。まだかろうじて茶色の生きてる豆もある。

茶色と黒の入り混じった焦げ焦げのコーヒー豆だけど、初めての焙煎完了に、町内中の人に「豆できたよー!」と叫びたい気分。

確か焙煎直後より数日置いた方がおいしい。何かに書いてあったな。

でもそんなこと今はいい。衝動の前に知識は必要なし!

ザルを持って家に入り、飲んでみる。初めての焼きたて挽きたてコーヒー。焦げの味はだいぶするけど、ちゃんとコーヒーだ。自分で焼いたコーヒー、おいしい!

やってみる、経験する。その一歩で世界は全然違う!!

四月の肌寒い日、焦げコーヒー豆は小さな一歩だったけど、「焙煎」が、イメージから立体になった瞬間だった。

-48-

Chihiro Taiami

  • title
    半径10メートル
  • date
    2023.06.09

おとなりの家に三匹の子猫たちがやってきたのは去年の秋だった。もうけっこう寒い季節。時には三匹並んで、時にはお互いの顔をぎゅうぎゅうにくっつけ窓のそばで押し合いへし合い場所取りをしてる姿は、あまりにも可愛いく、声をかけたくなる。

「おーいおはよー。何してんのー」たまに、かける。

猫たちがその家にきた時、娘を連れて初めて遊びに行った。娘は猫を追っかけ、私はコーヒーをいただいた。ぶんぶんぶるるん。

窓から見える、我が家とほんの少しだけ違う景色を不思議に心地良く感じながら。

コーヒーおいしいなぁ。柔らかい空気に包まれた空間で、神様か何かにこの場所に住んだことを感謝した。

「おとなりさんはコーヒーを淹れるのがうまい」

それにあらためて気がついたのは三日後くらい。ふと何かをしていた時に思い出した。いや、めちゃめちゃおいしかったぞ!!!と。

豆から挽いたコーヒーはとても香りが良かった。でもあのコーヒーの美味しさは…温度だ。最初に飲んだ時の口にあたった温度が絶妙だった。数日後にふと思い出すんだもの。そんなコーヒーを淹れられる?

あの時「おいしい」と言ったら、おとなりさんは「人が入れてくれた飲み物って水でもおいしく感じるのよ」と笑っていた。

子供が大きくなってから専門学校に通い、お菓子のお店を開いたというおとなりさん。

「何歳からだってできるのよ。私ができたんだから」と優しく笑ってくれる、人生の航路の先輩でもある。

それ以来、自分も沸騰したお湯を少し置いて、ちゃんと温度を調節してから淹れるようにした。

うん、やっぱりおいしい。

豆からひく。お湯の温度を少し下げる。ほんの少しの時間、ほんの少しの手間で全然違う。おいしいコーヒーの先生は、こんな日常の半径10メートル以内にいてくれた。

猫たちは、今日も変わらずムニムニとお互いの顔をくっつけて、網戸越しの外の世界を見つめている。君たちがそんないいかほりに包まれてムニムニしているのは、幸せなことなんだよ。

-47-

Chihiro Taiami

 

 

  • title
    BBCのコーヒー教室
  • date
    2023.05.28

5/21に開催した、「BBCのコーヒー教室」。

今回はコーヒーコラム番外編ということで、コーヒー教室の様子をお届けします!

事前にInstagramにて告知したところ、なんと一瞬で定員に!投稿をご覧下さった皆さま、本当にありがとうございます…!

今回は6名様をお迎えし、ペーパーを使ったハンドドリップの淹れ方をレクチャーしました☺︎

講師は、コーヒー好きが揃うBBCスタッフの中でも随一の「コーヒー博士」•三好が担当しました!ちなみに、BBCの長男…というよりお母さん的な存在で、雨の日は帰りに「ちゃんと傘持った!?」と聞いてくれます(笑)

まずはスタッフがお手本をお見せします!参加者の皆様の視線が集まる緊張の中…さすがは本番に強い男!美味しく淹れられたようです。

その後はお一人ずつ、ハンドドリップに挑戦!皆さん「緊張する〜!!」と仰ってましたが、本当にお上手でした!気付くと店内には、ふわ〜っとコーヒーの良い香りが…

スタッフが回りながら、皆さんのドリップを見守りつつアドバイス。お湯の太さ(量)や注ぐ速度で、がらっと味が変わります。難しいですよね〜うんうん…とカメラマンをしながら心の中で頷いていたところ、「いま写真撮ってるスタッフも、最初の頃はお湯の量太かったんですよ〜」と突然の暴露をくらってしまいました。すっかり油断していた…。

ハンドドリップに挑戦した後は、皆さんで飲み比べ。同じ豆でも、淹れる人によって全然味が変わるから面白いですよね。その後は当店の「レモンケーキ」と「クッキー」をお供に、淹れたてのコーヒーをお楽しみ頂きました☺︎

↑レモンケーキとクッキーはカフェで販売しています!お土産にも是非…!

おうちでのコーヒーの淹れ方など、ご質問にもお答えし気付けばあっという間の1時間。短い時間でしたが、コーヒー教室を通じて、コーヒーをもっと身近に感じて頂ければ嬉しいです!

私達スタッフも、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました☺︎

次回の開催が決まりましたら、またInstagramでお知らせしますね。コーヒーがお好きな方、ハンドドリップに挑戦してみたい…という方はぜひ!

BBC staff 渋川