Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。

年: 2023年

  • title
    水木しげるのはなし(もうすぐコーヒーの日篇)
  • date
    2023年09月20日

今年の夏は暑かったですね。

とうきび、枝豆、スイカ、キンキンに冷えたアイスコーヒー。味だけでなく、なんだか暑さに比例してずっと記憶に残ります。

夏にひやっと涼しさを運んでくれる妖怪や怖い話。ここ何年か、あの5歳児の出てくる国民的アニメや、おかっぱ頭のあの子のご長寿アニメでもホラー回がやっていて、子供達はワクワクしながら見ています。これまた風物詩と言えるんでしょうか。

そういえば今年の夏休み、水木しげるの幼少期を描いた「のんのんばあとオレ」という実写ドラマのDVDを、子供達と見ました。私が子供の頃、夏休みの一時やっていたドラマなので、レンタルにも置いていなくて取り寄せしたのですが、自分の人生観に影響したものなのでいつか一緒に見たかったのです。

水木しげるの故郷、鳥取県の米子が舞台で、妖怪の話をたくさん聞かせてくれるおばあさんや、アニメーションの楽しい妖怪たちが出てきます。日常を情緒豊かに過ごすしげるですが、今じゃ絶対ないような、隣町のガキ大将と軍団と、石を投げあって喧嘩する場面や、大人のゲンコツもあり、この時代のリアルを感じます。そして一見ひょうひょうとして頼りない、でもしげると同じくらい豊かな情緒を持つお父さんから、大事な時にぽっと出る一言が胸を打つ。

ちなみにこの「のんのんばあとオレ」は、フランスで「漫画界のカンヌ」と言われるアングレーム国際漫画祭で、日本人で初めて最優秀作品賞に選ばれました。世界が認めてくれて嬉しい。

しかし2巻組を2日間返し忘れてしまい、1200円も延滞料金がかかってしまいました。夏の終わりの妖怪のいたずらに、すこし寂しい気がしました。

さて、涼しくなってくると恋しいのがやっぱり温かいコーヒー。きたる10月1日はコーヒーの日です。

日本では涼しくなるこの季節にコーヒーの需要が高まることから、1983年に全日本コーヒー協会が、「コーヒーの日」を制定しました。

また、コーヒー豆の一大産地であるブラジルで9月までに収穫が終わり、10月から新たに栽培が始まることなどから、2014年、国際コーヒー機関でも同じ10月1日が「国際コーヒーの日」と制定されました。

日本、世界ともに10月1日はコーヒーの日です。

毎日飲み続けているコーヒーですが、新年度にあらためて生産してくれる方たちへ感謝をする日にもなりますね。本当に、毎日コーヒーが飲めるってありがたいことです。

水木しげるは若い頃コーヒーが大好きでしたが貧乏で、仕事の打ち合わせで編集者と喫茶店に入ると、どちらがコーヒー代を払うのか考え過ぎて原稿料をもらうのを忘れて帰ったことがあったそうです。

以前、無謀にもブラウンブックの依頼をしよう!しかも原稿料は払えないのでコーヒー豆でお礼します!と熱烈なラブレターのような執筆依頼をしたことがあります。(もちろん)叶いませんでしたが、丁寧なお返事をいただき、その中に「水木は高齢でコーヒーを飲むのをやめました」の一文がありました。

水木しげるが亡くなったニュースを知った時は、ご冥福を祈り、家で半べそかきながらハンドドリップでコーヒーを淹れました。今年のコーヒーの日も、天国で美味しいコーヒーを飲んでいるといいな。

LOVE COFFEE &水木しげる!!!!

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Chihiro Taiami

  • title
    わたしとコーヒーの木
  • date
    2023年09月09日

コーヒーは、植物で、生もので、イキモノです。

とは言っても、私たちがふだん出会うのは、焙煎された後の茶色い豆。この豆という言い方も、実は正しくはありません。

コーヒーは、<マメ科>ではなく<アカネ科>で、コーヒーノキ属に属しています。コーヒーノキ属って、なんかそのまんまで可愛いですね。

この木にジャスミンのような香りの白い花が咲き、コーヒーチェリーと呼ばれる赤い(または黄色い)実をつけます。その中に入っている種子がコーヒー豆です。通常一つの実の中に種子がふたつ。

ということは!?コーヒー豆は、実はマメではなく、タネなのです。

バイヤーでも焙煎士でもない私が、実をつけるほどに成長したコーヒーの木に出会ったのは人生で三度です。

一度目は沖縄のコーヒーファームです。

コーヒーは赤道近くの暖かいところで育つ植物です。沖縄には、約百五十年ほど前にはコーヒーの木が持ち込まれていたようです。久しぶりに調べてみると、今は観光農園や、農園キャンプをやっているところなどもありびっくりしました!自分で摘んだコーヒーでモーニングコーヒーを淹れる、なんて絶対やってみたい!!

話はそれましたが、学生時代の仲間と行った沖縄。誰もそこまでコーヒーに思い入れはなかったけど、わがままを言って連れて行ってもらいました。

沖縄北部まで長いドライブ。ああ。時間ない。一応電話してみよう。とわーわー言いながら、着いたらやはり営業時間が過ぎていました。でも、待っていたお店の方が親切に対応してくれ、この農園の成り立ちのことなどを教えてくれました。コーヒーの葉のお茶もいただきました。

十年もののコーヒーの木を見せていただいたのですが、時すでに最後の日の光が沈んだくらいの夕暮れというか夕闇。コーヒーチェリーが闇にぼやーっと浮かび上がっていました・・・。でも、息せき切らせて辿り着いた沖縄の、そのぼやーっとしたコーヒーの木が、私にとっては、コーヒーの木と初めて出会った大切な思い出になりました。

二度目はコーヒーと妖怪の聖地、インドネシアのバリ島で。

ハニームーンというやつで行ったのですが、ガイドさんに連れて行ってもらった農園は、カカオや他の植物も育てているところでした。

コーヒー単体で育てている区画もあったけれど、山の中に色々な草木が生えていて、その中にコーヒーの木がひょっこり現れたりしたのが印象的。植物の一つなんだよなぁ。きっとこうやって野生に生えていたんだなぁというしみじみした気持ちになりました。

ジャコウネコも寝ていました。

たぬきみたいな顔をしたこの動物がコーヒーチェリーを食べると、果実が消化され種子(コーヒー豆)がフンと一緒に出てきます。それを綺麗に洗って作られる豆は「コピルアク」と呼ばれます。

鍋でコーヒー豆を炒る、カラフルな模様の服を着たおばあさんもいました。

連れは農園の人たちとコーヒーと煙草で一服。そういうふうに人が一緒にリラックスする時間は、国も言葉も超えるという風景を見ているようでした。

三度目、それはまさかの実家でした。

数あるアロエやクジャクサボテンにまぎれて、冬の寒さに何度も弱りながらも、ヒョロヒョロとのびたコーヒーの木の鉢植えがありました。

ある日、母から「コーヒーに花が咲いて実がなった!」と電話が来たのです。

かけつけると、そのやせっちょのコーヒーの木に、本当に白い花と、沖縄やバリで見たのと同じまっ赤なコーヒーチェリーが三つ、ついていました。感動してしばらく眺めたあと、一つの実を割ってみました。

中には向かい合った、ぬるぬるした二つの種。なんて可愛い。赤ちゃんなのに、もうコーヒー豆の形をしています。コーヒー豆は乾燥させて焙煎して飲むんだと親に偉そうに講釈たれながら、出窓のところで数日乾燥させることにしました。しかしいつしか忘れ去られ、その二粒はどこかに行ってしまいました。

また実がつくといいなぁ。お母さん、来年もひとつよろしくお願いします。

そんなこんなでコーヒーの木との思い出を綴ってみました。

最後に、コーヒーの木の花言葉を。

「一緒に休みましょう」

忙しい時もコーヒーと一息、いい時間を!

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Chihiro Taiami