Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。

カテゴリー: coffee column

  • title
    美味しいコーヒーを飲み続けるために
  • date
    2021年09月30日

サステイナブルとかSDGsとかよく耳にするようになりました。カタカナの言葉はわかりづらいけれど、好きなものと関連させるなら少しわかるかもしれない。そこで、コーヒーでいう「サステイナブルコーヒー」とはどんなものなのかを知っていきたい思います。

サステイナブルは、「持続可能な」という意味。

持続可能なコーヒー、とは?

熱帯植物であるコーヒーの木は、赤道近くの暖かい地域で育ちます。干ばつや霜など気候に大きく左右され、安定した生産が難しい作物です。近ごろの地球の気候変動により、サビ病などの対応もとても大変です。コーヒーの実を収穫する段階では、特に人手とコストがかかりますし、コーヒーチェリーという赤い果実から、種子を取り出し生豆に加工する段階では、たくさんの水や、エネルギーを使います。さらに、コーヒーチェリーから取り除かれた果皮などの廃棄物、精選で使った排水や、粘質を取るために使った汚染水が出るので、生産者たちは、コーヒーの木を育てるだけでなく、自然を守るために、汚染水の浄化や、使う水の量を減らすなどの努力もしています。

このようにコーヒーの木を植え、育て、収穫し、精選の過程までを担うのが、生産地である開発途上国。焙煎し、主に消費するのが、先進国です。コーヒーは作る場所と飲む場所が遠く離れているため、私たちはあまり生産地のことをイメージすることができません。同じように生産地の方でも、収穫したコーヒーにどのような価値がつき、飲まれ方をしているのかわからない場合も多いそうです。

「持続可能なコーヒー」に話を戻します。

コーヒーに関わるみんなにとって、どういう形が喜びといえるのか。例として

消費者が美味しいコーヒーを飲み続けられる。コーヒーのある時間を楽しめる。

生産者が誇りを持ってコーヒーを作り続けられる。社会保障が充実したり、安心して生活をすることができる。

コーヒーを栽培したり、飲んだりすることで、自然を壊さないよう、動物や植物と共生し続けていくことができる。

次の世代の人たちが、今と変わらず美味しいコーヒーを飲み続けることができる。

SDGs( Sustainable Development Goals)は、それを続けていくための目標を定めたものですが、立場の違う人や、自然の生き物たちと、どこで折り合いをつけるかという、いわば妥協点です。

カップ一杯のコーヒーにどれくらいエネルギーや手間暇がかかっているのか。生産者はそれに見合った報酬を受け取れているのか。そのコーヒーの価値や背景を知らなければ、安さやパッケージでしか、コーヒーを選ぶ基準はなくなってしまいます。私たちがそのような基準で選び続けていると、その需要に応え、生産地でも品質より低価格で大量に生産できるコーヒーを作ることになります。あまりに得られる収入が少ないと、他の作物に転作するなど、コーヒー農園をやめてしまう場合もあります。

農園の中には、渡り鳥や虫など、自然との共生を考えたり、子供たちや女性の勉強の機会を大切にしているところもあります。アヘンの元であるケシの栽培をしていた生産者を立て直すため、国が主体となったプロジェクトで、コーヒー栽培に転作した農園もあります。色々な農園を知るのは面白いです。さまざまな農園が信念を持ち、行動を続けていくことは、とても大変で、同時にやり甲斐のあることなのではないかな、と思います。生産者と消費者、お互いのことを知るのも第一歩ではないでしょうか。

私たちが美味しいコーヒーを次の世代まで届け、飲み続けるためにできること。

10月1日はコーヒーの日です。まずは目の前のコーヒーを美味しい!と一息。その次に、これからのコーヒーのことを少し考えてみるのもいいかもしれません。

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chai

  • title
    ある母ちゃんの珈琲記 vol.2 0時の昆虫のはなし
  • date
    2021年09月22日

今年の夏も暑かったですね。

アイスコーヒーがぶ飲みでした。タンブラーに入れて、子どもたちと虫取りに走りました。コーヒーってこんなに持って走るものだっけ。さてさて、今年の夏はこれを書かなきゃ終われません。それは、この夏出会った昆虫たちのことです。

虫っていうのは成長に関わる一人の先生じゃないかというくらい、色々なことを教えてくれました。

深夜の虫カゴの中、ブンブン羽音を立てながらメスを追い回すオスのカブトムシの執念はこわいくらいだったし、前日の夜、一緒に昆虫ゼリーを食べていた対のクワガタが、朝起きるとメスがオスのクワに挟まれて半分首がとれた状態になっていたり。それでもひっくり返って、わずかに手足を動かしながらしばらく生きている。死んだメスは土に埋めたのですが、翌日アリが列になり、カラダを分解して運んでいきました。

カマキリが首を振りながら可愛いらしいく無糖ヨーグルトを食べていたと思ったら、トンボをカマに挟んで頭からむしゃむしゃと食べる、本来の姿も見せてくれました。

以前はハチをみると攻撃されるのではないかと思ったけど、そうっとしていればこわい存在ではなく、野菜や果物が果実をつけるための受粉のお手伝いをしてくれていることもわかりました。

あんなにちっちゃくてパリッと割れてしまいそうな殻のカタツムリが越冬し、三年かけて大人になることにもびっくりしました。ダンゴムシは前と後ろ半分ずつ脱皮すると絵本で読んだけれど、まるっと全身脱いだ皮を発見することもできました。

香川照之の昆虫番組を見て、オニヤンマのオスはメスを探して川の周りをぐるぐる回っているから必ず同じ場所に帰ってくるはずだと、虫あみを握りしめ、逃したオニヤンマを待つ息子の姿がありました。

アゲハの幼虫は、誰がこんな色にしたのかっていうくらいとても鮮やかな緑と黒とオレンジの模様。サナギになる時は、その綺麗な柄の皮が、クシャクシャに脱いだ靴下のように、サナギの先っぽにぶさらがっていました。殻から出てはこれたものの、羽が縮れたまま、広げられなかった子もいました。

生きるパワーはすごい!

彼らには嗜好品なんていらない。短い命をパッと輝かせて生きている。人間はだらだらと生き、コーヒーを飲み、泣いたり笑ったり、虫に比べればたっぷり時間がある。だけどその豊かな感情と、時間があるからこそ、ただコーヒーを飲むということに幸せを感じることができるのかもしれません。だらだらとマグカップを片手に虫カゴを覗いている0時。

来年はどんな夏になるだろう。

chai

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