吉田篤弘さんの「月とコーヒー」という本をご紹介します。
吉田さんは吉田浩美さんと、クラフト・エヴィング商會(しょうかい)という名前で執筆とデザインの仕事をされていて、お二人とも本がとても好きな方です。
と言っても本人から聞いたわけじゃないんですが、どの作品をみても、文章はもちろん、そのデザインや字の配置までも、本への愛情を感じます。
ものがたりの始まりの部分のような、読む人に続きをゆだねられているような短いお話が24篇。どのお話も食べ物やコーヒーが出てきます。
それもナポリタンやサンドイッチ、クリーム・シチューにドーナツなど、食欲をそそられるだけでなく、喫茶店が恋しくなってしまうものばかり。そして脇役には青いインクの万年筆や、コーヒーの染みのついたノートなど。
これは吉田さんが本に加え、喫茶店で過ごす時間がお好きなんだろうと勝手に憶測してみる。きっとこの人は自分が好きなものを雲の中から掴み取り、ムフフと味わいながら形にするのが得意なむっつり系。
すみません、これも憶測です。
あとがきには、
ーおそらく、この星で生きていくために必要なのは「月とコーヒー」ではなく「太陽とパン」の方なのでしょうが、この世から月とコーヒーがなくなってしまったら、なんと味気なくつまらないことでしょう。
とあります。
それは人によってタバコだったりビールだったり、音楽やマンガや小説だったりするかもしれない。ただちょっとムフフっとできるものがあるだけで、自分をリセットしたり、整えたりしながら、日々を続けていけるのではないでしょうか。
一日の終わりの寝しなに読むイメージで書かれたそうです。
傍らにコーヒーを置いて、絵本の中の犬とカエルのように、本を開いて2秒で寝落ちできたら最高です。
「月とコーヒー」吉田篤弘・著
徳間書店
chai
-1-