コーヒーの代名詞とも言えるカフェイン。
カフェインは、植物に含まれる「アルカロイド」という苦み成分の一つです。
一八二〇年ごろ、ドイツの化学者ルンゲがコーヒー豆から取り出したことから、カフェという言葉を含むこの名前になりました。数年後には他の学者がお茶から同じ物質を取り出し、お茶由来であることからテインと名付けられましたが、のちにカフェインに統一されます。
もしルンゲがコーヒー豆から発見するのが少しでも遅かったら、カフェインという言葉は消え、テインの方になっていたかも!?
またルンゲにコーヒーの研究をすすめたのは、文豪ゲーテだったという逸話もあり、彼も大のコーヒー好きだったそうです。
カフェインには興奮作用があり、夜に飲むと眠れなくなるという人がいるのもこのためです。コーヒーの他にも前述したお茶(玉露、紅茶、煎茶、ウーロン茶、番茶)、ココア、コーラ、エナジードリンクなどさまざまな飲料に含まれています。意外にも群を抜いているのが玉露で、コーヒーの二倍以上の量が含まれています。
カフェインの覚醒と興奮の作用を最初にして最大に利用したのが、八世紀の末、メソポタミア地方にあらわれたイスラーム神秘主義のスーフィーと呼ばれる僧侶たちです。スーフィーという名は、もともと羊の毛を指すスーフから来ていると言われ、羊毛の白いマントを身にまとい、荒野で修行に励んでいました。
スーフィーたちにとって夜は神と一体となる神聖な時間。眠らないため、興奮するため、食欲を断つためにコーヒーを飲み、厳しい修行を続けました。コーヒーが世界に広まっていく最初の一ページです。
興奮作用のほかにも、疲労回復、脂肪燃焼、利尿、消化促進、気管支拡張などの作用があることがわかっており、糖尿病予防や、がん、メタボリック症候群なども、コーヒーの効果の研究がすすめられています。
ただし他の食品成分と同じように、過剰な取りすぎはよくありません。妊娠中や胃が荒れている時などは、適量にすることも大切です。
ちなみに浅煎りの豆と深煎りの豆ではどちらがカフェインが多いか? 焙煎の時の熱でカフェインは一部気化するので、焼いている時間の長い深煎りの方がカフェインは少なくなります。しかし気化した分、深煎りの豆の方が軽く、浅煎りの豆の方が重くなるので、実際に豆を計量してコーヒーを淹れる時には、浅煎りでも深煎りでもカフェインの量は変わらないことになります。
コーヒーの長い歴史の中では、十七世紀のイギリス、コーヒーハウス通いに夢中になる男性たちに対し、自由な入店が許されなかった女性たちから、こんな抗議が起こったこともありました。
「コーヒーを飲用すると男性の性欲が著しく低下する。全人類絶滅の危機!」
コーヒーにハマった男性たちが妻との時間を怠ってしまったのでしょうか。今のところ人類絶滅はまぬがれているようです。
参考
「コーヒーが廻り世界史が回る」臼井隆一郎
「コーヒー「こつ」の科学」石脇智広
「コーヒーについてぼくと詩が語ること」小山伸二
「コーヒー学検定《上級》金沢大学編」
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chai