或る人問ふ。珈琲道中とは何ぞや。答へて曰く、何でもなし、唯の珈琲好きの膝栗毛なり。
ぺペンペンペンペーン
珈琲が好きで知り合った友人がいます。
北の街、違う喫茶店で働いていた二人。縁あって知り合い、その後偶然、同じ時期に南の方へ移住。それから私はまた地元に戻ったけれど、彼女は今もその土地で生活を続けています。
同じ日本とはいえ、スコールもあれば椰子の木も生えている。地名、方言、微妙なイントネーション、スーパー、朝の情報番組、新鮮なことばっかり。
「珈琲が好き」「B型」という共通点はあれど、仲良くなってそんなに時間も経っていない。そんな私たちが初めての土地でした珈琲をめぐる珍道中は、本当に楽しいものでした。
列車で喫茶店に行くにも「薬院てなんて読むの?」「それよりそこに大きい神社があるから寄って行こう」
知らないものばっかり、面白いものばっかり。目についたところはどこでも立ち寄ってみました。
もう一つの共通点は「直感で生きる」
興味のあるものを見つけると動かずにはいられない。逆に計画を立てるとあんまり上手くいかない。でも上手くいかないのもそれはそれでまた面白い。
全然知らない街の市場にある珈琲屋さん。魚の匂いを通り抜けてたどり着きました。もうそのシチュエーションだけで最高でした。マグカップになみなみ注がれた珈琲の味も最高。
大きなお濠のぐるり、運動コースの向かいにあるスターバックス。マラソンをする人、ベビーカーを押す人、部活動の生徒達。珈琲の香りと自然がいっぱい、こんな環境で部活できるってどゆことよって見てるこっちが勝手にいい気分。
珈琲のレジェンドのお店では興奮を抑えきれず、小さな声で熱く語り合いました。
うさぎカフェを探して歩いていただけなのに、スラム街のようなところに迷い込んだこともありました。
自分たちがどこにいるのか、場所も時間もわからない感覚になったこともありました。
小さなアパートで長ネギを切って鍋をしました。「え、緑の部分って入れていい?」そんなどうってことない会話。そのあと、彼女が珈琲を淹れてくれた手つきと真剣な表情は今も思い出せます。
二人は生きる感覚が似てる。
住む場所が違っても、頻繁に連絡を取らなくても、これから先の道、どこかでまた一緒に何かをする。
多分人に頑張っているとか言われるのはあまり好きじゃないその子は、自分のペースで、納得のいくやり方で日々を過ごしている。
今、自分たちは人生のどのへんにいるのやら、何をしているのやら。弥次さん喜多さん珈琲道中。
あの日寄った神社では「これからも一緒にたくさん珈琲の旅ができますように」と絵馬を書きました。
また会う日まで、お互いのどんな一日にも、珈琲が味方でいてくれるでしょう。
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taiami