Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。

カテゴリー: coffee column

  • title
    珈琲道中
  • date
    2022年10月19日

或る人問ふ。珈琲道中とは何ぞや。答へて曰く、何でもなし、唯の珈琲好きの膝栗毛なり。

ぺペンペンペンペーン

珈琲が好きで知り合った友人がいます。

北の街、違う喫茶店で働いていた二人。縁あって知り合い、その後偶然、同じ時期に南の方へ移住。それから私はまた地元に戻ったけれど、彼女は今もその土地で生活を続けています。

同じ日本とはいえ、スコールもあれば椰子の木も生えている。地名、方言、微妙なイントネーション、スーパー、朝の情報番組、新鮮なことばっかり。

「珈琲が好き」「B型」という共通点はあれど、仲良くなってそんなに時間も経っていない。そんな私たちが初めての土地でした珈琲をめぐる珍道中は、本当に楽しいものでした。

列車で喫茶店に行くにも「薬院てなんて読むの?」「それよりそこに大きい神社があるから寄って行こう」

知らないものばっかり、面白いものばっかり。目についたところはどこでも立ち寄ってみました。

もう一つの共通点は「直感で生きる」

興味のあるものを見つけると動かずにはいられない。逆に計画を立てるとあんまり上手くいかない。でも上手くいかないのもそれはそれでまた面白い。

全然知らない街の市場にある珈琲屋さん。魚の匂いを通り抜けてたどり着きました。もうそのシチュエーションだけで最高でした。マグカップになみなみ注がれた珈琲の味も最高。

大きなお濠のぐるり、運動コースの向かいにあるスターバックス。マラソンをする人、ベビーカーを押す人、部活動の生徒達。珈琲の香りと自然がいっぱい、こんな環境で部活できるってどゆことよって見てるこっちが勝手にいい気分。

珈琲のレジェンドのお店では興奮を抑えきれず、小さな声で熱く語り合いました。

うさぎカフェを探して歩いていただけなのに、スラム街のようなところに迷い込んだこともありました。

自分たちがどこにいるのか、場所も時間もわからない感覚になったこともありました。

小さなアパートで長ネギを切って鍋をしました。「え、緑の部分って入れていい?」そんなどうってことない会話。そのあと、彼女が珈琲を淹れてくれた手つきと真剣な表情は今も思い出せます。

二人は生きる感覚が似てる。

住む場所が違っても、頻繁に連絡を取らなくても、これから先の道、どこかでまた一緒に何かをする。

多分人に頑張っているとか言われるのはあまり好きじゃないその子は、自分のペースで、納得のいくやり方で日々を過ごしている。

今、自分たちは人生のどのへんにいるのやら、何をしているのやら。弥次さん喜多さん珈琲道中。

あの日寄った神社では「これからも一緒にたくさん珈琲の旅ができますように」と絵馬を書きました。

また会う日まで、お互いのどんな一日にも、珈琲が味方でいてくれるでしょう。

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taiami

  • title
    コポコポ十年
  • date
    2022年10月10日

結婚して義実家に行き始めた頃、心細い私を助けてくれたのはコーヒーでした。

といっても、とても優しい義父母ですが、どこに座っていいのかもわからないような未熟者だったので、こんな嫁にあちらの方が困惑されたかもしれません。

ヘラヘラしながらよくわからない返事をし、出してもらったご飯をよく食べるというところだけは褒められ、食後の茶碗洗いはやらなくていいと言うのを真に受けていいのか、やったほうがいいのかわからず、結局中途半端にやったりやらなかったり。食べすぎたお腹をさすってたまにこっそりゲップをしながら、不自然にテレビの方を向いてるようなありさまでした。

そんな時、コーヒーメーカーからコポコポと音がしていい香りが漂ってきて、すごく心が和んだのを覚えています。救いを求めるようにお湯がぽたぽた落ちるのをずっと眺めていました。

私がコーヒーを好きだということを知り、今では家に着く前に淹れておいてくれ、居間に入るとすぐにいいにおいが漂ってきます。「◯◯ちゃんは本当にコーヒーが好きだよなぁ」という義父の言葉は、なんだか嬉しくて、やっぱりヘラヘラしてしまいます。

嫁に来て十年近く経ち、子供が産まれても頼りない。でも十年たってみると、自分の育った環境で当たり前だと思っていたものが当たり前じゃないこと、正しい、正しくないだけではないいろんな考え方があることがわかってきました。

初めのうちは戸惑うこともありましたが、今は、これは義実家の方が素敵だな、と思うところもたくさんあります。もちろんあらためて自分を育ててくれた家族のいいところも、ちょっと独特だったんだなというところも。

なんて悟ったように言いましたが、どっちもありがたさが身に沁みることもあれば、うまくいかずに落ち込んだり、コンチクショーと思うこともあります。煩悩だらけの人間で、全てを受け入れて菩薩のような心でい続けるのはむずかしい。

実家でも義実家でも、いただくコーヒーにはそれぞれの美味しさがある。もともと少ない毛がさらに薄くなったじいちゃん達、目尻が下がって優しい顔になったばあちゃん達と、飲みながら他愛ない話をする時、コーヒーが、みんな元気なうちに孝行しろよと言っているようです。

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taiami