Coffee Column
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    カランコロンの音
  • date
    2023.02.13

喫茶店の扉のカランコロンという音が鳴ってこの本は始まります。

キン・シオタニさんの「コーヒーと旅」

読み終わって喫茶店に行ってきたような気分になったのは、この人は本当に喫茶店が好きなんだろうなと感じたのと、その味わい方が自分と似ていたからかもしれないです。

キン・シオタニさんの喫茶店の好きなところがたくさん書いてあって、読んでいて楽しくなります。

そこで自分にとって、いい喫茶店てどんなところだろうというのを考えてみましたが、パッと浮かんだのが「朝起きて行きたくなるところ」でした。

誰とも約束もしない、前の日から計画もしない、起き抜けに行きたくなるところ。

スマホもカメラも必要ない。体ひとつでフラッと行けるところ。カランコロンと扉を開けて、そこの空気をたっぷり吸い込んで、その空気にはコーヒー(それからゆで卵やナポリタンやトースト)の香りが満ちていて。時間をかけてゆっくり目を覚していくところ。おばあちゃんになって朝にこんな時間を過ごせたらもう生きててよかったなって思うと思います。ああ書いているだけで幸せになってきてしまいました。なんだか銭湯に近い?それともおばあちゃんになってそんな場所を人に提供できたら、それもいいなぁ。すっかり妄想モードですね。

喫茶店やカフェに来る人にとって、コーヒーのうんちくはきっと必要ない。ただコーヒーが美味しくて、あなたの居場所だよっていう席がある。そこで自分の想像力を膨らませたり、必要ないものを削ぎ落としたり、心や体を整えたりして、また自分の手で扉を押して出ていく。

そういう場所を作るのには、お店の人はやっぱりいっぱいコーヒーの勉強をして、気づかれないように気遣いをして、裏できびきび動いているでしょう。

そういえばカランコロンの音は、私の大好きなゲゲゲの鬼太郎の下駄の音でもありました。

「コーヒーと旅」キン・シオタニ

(マドレーヌブックス)

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Taiami

  • title
    本のタイトル
  • date
    2023.01.17

お正月が明けていつも通っている皮膚科に行ったら、普段は見かけない、帰省中と思われる若者が待合室に何人かいました。

自分も数年前まで長距離バスに乗って帰ってきてたなぁなんて思ったら時すでに十数年前でした。

私の隣にそんな若者のひとり、今どきのメイクと服装の女子が座っていたのですが、手の中には白いきれいな装丁のわりと分厚い単行本。はい、勝手にロックオン。なんてタイトル?誰の本?鼻の下伸ばして気づかれないように、ギリギリの顔の角度を保って見ましたが結局見えませんでした。

本を読んでいる人の姿はいいなぁ。若者の姿はなおさらいいなぁ。

話しかけようか迷う。四十間近の度胸なし!結局声をかけられないまま彼女は診察室に呼ばれていきました。

もう一度生まれ変わって、生まれる前に神さまにやりたいことリストを提出できるとしたら、十代で本棚で手と手が触れ合う出会いをしたいと書きます。

なんの本だったのかいまだに気になり続けてます。

もしまた同じような場面に出会えたら、

「聞けやしない、聞けやしないよ・・・」ってちびまる子ちゃんの野口さんみたいにつぶやいていないで、本のタイトルくらいモジモジしないで聞こーっと!

いや、むしろ野口さんは普通にズバッと聞きますね。

今年の目標です。二〇二三年もどうぞよろしくお願いします。

-42-

Taiami

  • title
    ある母ちゃんの珈琲記 vol.3 冷めたコーヒー年末編
  • date
    2022.12.30

師走の忙しい時期にゆっくりこのコラムを読んでいる人も少ないのではないかと勝手気ままに書きはじめています。

私は十年前にBBCで働いていました。今は家で小さな子供達との時間を過ごしています。

「洗濯も掃除も何にもしなくていいから、子供が危なくないように目を離さないでしっかり見てなさい」という祖母の教えどおり、子供一色の毎日です。とにかく家事以外は子供と遊びまくりの日々です。

BBCで働いていた頃は仕事をやめてずっと家にいるなんて考えられませんでした。仕事が大好きだったから。

でも子供が産まれてみるとめちゃめちゃ可愛くて、そして育児は仕事と同じように、日々ワクワクとヘトヘトと変化の連続で、自分の時間のなさは仕事以上。(大変さを比べる話ではないけれど)

スマホで調べものをしたり、トイレでぼーっとするたった十分の時間もないし、一服しようと淹れたコーヒーはほとんどがそのまま放置され冷めていきます。それを埋めるのは「お母さん見て」「お母さん聞いて」「お母さん遊ぼう」の声。

ゆとりのある時はいいけれど、余裕がないと怒ってしまったり、「早くしなさーい!」「着替えなさーい!」急がせてしまいゴメンナサイ。

そう怒鳴る自分は朝の支度をしながらまだパジャマ姿だったりして、説得力ゼロ。

自分の時間がほしい、という気持ちは子供がひとり増える度に消えていきました。どんどん大きくなる彼らとの時間は、先の自分が振り返るときっとあっという間で、ひとりの時間なんてこの先いくらでもあるんだと。

休憩時間は十分とれれば充分。傍らにコーヒーがあるなら満充電です。

BBCで働いていた頃の、仕事の動線や在庫確認、優先順位、スタッフの仕事分担、お客さまの気持ちの考え方などは、家事動線や子供のお手伝いの分担などにそのまま大いに役立っていて、形は変われど同じ「仕事」として全く変わりません。

あの時から十年分、歳を重ねました。

住む場所や環境も変わりました。

相変わらずお金もないです。

でも、BBCにいた頃と同じように、目の前の大切なものに馬鹿正直に向き合っていられるのは、とても幸せなことです。

冷めたコーヒーは、今を表す愛おしいコーヒー。

とにかく私はコーヒーが大好きです!BBCが大好きです!

来年もいい年になりますよう!これからも変化を恐れず、進化をやめないBBCのことをどうぞよろしくお願いします!

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Taiami

  • title
    ピザトースト
  • date
    2022.12.12

モーニング娘。になりたかった。


センターはゴマキに譲るとして、低身長を武器にミニモニ。の5人目のメンバーに選ばれるところまではイメージがついていた。


幼心にその夢を諦めたのは、いつだったのだろう。思いのほか身長が伸びてしまっていたあの日か、学芸会のヒロインオーディションに落ちたあの日か、はっきりと覚えてはいないけれど。

 
モーニング娘。に憧れた理由の一つである、デビュー曲の「モーニングコーヒー」。曲はもちろん、衣装があまりに魅力的だった。黒のタートルネックのセーターと、赤いタータンチェックのミニスカート。その組み合わせが好きすぎて、当時遊んでいたリカちゃん人形は大体同じ格好をしていた。

月日は流れ、堅実に真っ直ぐ歩いて来たと思った道をいざ振り返ると、山あり谷あり、お酒も誘惑もたくさんありな、うねうねに曲がった道ができていて笑ってしまう。飽き足らず二日酔いで便器を抱え込むような私を見て、もう酒は十分だろう、というお告げなのか、20代も後半にして、コーヒーの美味しさに気づいてしまった。

思い出されるのは、あの曲。晴れてコーヒーが飲めるようになった私の今の小さな夢は、時間が止まったような古い喫茶店で、お気に入りの洋服を着て、モーニングコーヒーを飲むことだ。

1人でも別にいいけれど、曲の中では「モーニングコーヒー飲もうよ、2人で」と歌っているから、そこは忠実にいこう。無理やり向かいに大事な人を座らせて、あつあつのブラックコーヒーを少しずつ飲みながら、なんてことない話をするのだ。あぁでも、せっかくなら朝ごはんも食べたいなぁ…なんてわざとらしく言いながら、焼き立てのピザトーストを頼もう。トマトの香りが食欲を唆るピザソースの上には、こんがりと焼き目がついたたっぷりのチーズ。サラミの旨味、たまねぎとピーマンの苦味が程良く効いていて、どこを食べても美味しくて、ぜいたく。


「コーヒーよりピザトーストが食べたいだけじゃないの?」と向かいから鋭いつっこみが飛んできそうだが、コーヒーとピザトーストと古い喫茶店…相性抜群なのだからしょうがない。



タートルネックのセーターと、タータンチェックのスカート。静かな店内には、ナイフとフォークがお皿に当たって金属音が響く。それすらも心地いいと思う、ゆったりとした時間が流れる。喫茶店の窓から見える出勤中のサラリーマンを横目に、少しの罪悪感と優越感を感じながら、小さく切り分けたトーストを澄ました顔で一口。

 
頭の中では、もし今、モーニング娘。になれるとしたらどうしようかなぁ…なんて、全く意味のないことを心配している。
  

 



BBC staff 渋川
     

  • title
    coffee cup
  • date
    2022.12.07

クリスマスが近づき、贈り物を考える楽しい時間がやってきました。

コーヒー好きの方に贈りたいもの、いやいや自分が欲しいもの。

クリスマスブレンドなどの豆、コーヒーミルなどの器具、いろいろありますが、手頃で種類も多く、選ぶ楽しみもあるコーヒーカップはいかがでしょうか?

有名メーカーのカップから100均まで、見ているとワクワクしてしまいますね。

コーヒーカップのサイズにも実はいろいろなものがあり、

スタンダードなカップで120〜140cc、

デミタスでその半分、

モーニングで160〜180cc、

さらに大きなものでマグカップが180〜210cc

またカフェオレボウルというものがあり、これはフランスで朝食時にカフェオレを入れ、パンをひたして食べるのに使われています。大きなお椀のような形をしていて、コーヒーはもちろんスープやサラダを入れて使うこともできます。ビンテージなどおしゃれなデザインのものも多く、小物入れや飾りにすることもできます。

またコーヒーカップは、素材も種類が豊富です。

ホーロー、ガラス、ステンレスなどいろいろありますが、中でもよく使われるのが陶器と磁器。

名前は似ていますが、陶器は粘土を原料に1000〜1200度に焼き上げたもので、少し厚みがあり、ザラザラしています。焼いた後の表面は鉄分などによって色がつくので、その土地の焼きものの個性にもなっています。

それに対し磁器は、磁土という鉄分の少ない、白く純粋な粘土に長石や石英を加え、1200〜1500度の高温で焼きあげます。色は白く、触り心地はツルツル。叩くとチンッと澄んだ音がします。

カップの縁の厚さや形でも、コーヒーの味わい方が変わってきます。

陶器のような厚手でざらっとした舌触りのものは苦味を感じやすく、磁器やガラスなどの滑らかなものは酸味や甘みを感じやすくなります。

縁の形で言うと、真っ直ぐのものは、苦味を感じやすい舌の奥に直接流れ込むため、深煎りのコーヒーに向いており、縁の広いものは全体に広がり、酸味を感じやすくなるため浅煎りのコーヒー向きです。好みのコーヒーの味で使い分けることもおすすめです。

ちなみに今年、尊敬する仕事仲間からお揃いだとガラスのマグカップをプレゼントしてもらい、飲むたびにその人のことを思い出しています。

真似をして友人にも、普段は買わないようなクリスマスホリデーのカップを買い、送ってみました。なかなか会えないけれど、それでコーヒーを飲むと、あっちは今何しているかな〜と楽しい気分になります。

贈り方いろいろ、選び方いろいろ。

まだまだ始まったばかりの冬に、お家でホッとできるコーヒーカップはいかがでしょうか。

ブラウンブックスカフェのオンラインショップ

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taiami