Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    パセオ
  • date
    2022年10月28日

 コロナで始まり、コロナで終わる、そんなパセオでの営業でした。

 遡ること2019年11月。台湾買付の商品を山盛りに用意して挑んだパセオでのポップアップショップ。その後2月には店主、急遽アメリカへと買付へ。今思えばコロナ禍の忍び寄る中、この2月に買付に行けたことは本当にラッキーでした。店主の強運に感謝です。そして2020年3月3日、パセオでの本格的な営業を開始しました。
 しかし待ち受けていたのはオープン翌日からの時短営業。そして1ヶ月半にも及ぶ全館休業。
 前代未聞の事態に、このままでは廃業する!とパニックになり店主も私も泣きました。あの時、やれることをやるしかないと不安の中でも前を向いたのは私たちだけではなかったと思うのです。社会全体で不安真っ只中の状況。それでも私たちのことを応援してくれた多くのお客様の存在に救われました。

 営業再開の後も時短営業と休業を繰り返しながら、ひと気の少ない街の中で、かつて日常だった札駅の人通りの賑やかさを思い返したりなどしました。そして1年、2年。ゆっくりゆっくりと、街が息を吹き返していくようでした。

 私の話を少しだけ。

 3月、パセオでの営業が開始。そこから私の店長としての毎日が始まりました。初めて店長という肩書をいただいて、パセオを二年半過ごしました。開店当初からパセオは「店主星川のお店」というのが私の中でひとつ大きな芯としてあって、正直、最初の頃は「店長」なんて呼ばれることにも違和感ばかり。「新人佐藤です~!」なんて言っていた日々はついこないだのことと思っていたというのに! 特に開店してまもなくは周りのスタッフがみんな、自分よりはるかに人生経験豊富な方ばかりということも、その違和感を後押ししていたんだと思います。それがスタッフに、お客様に、「店長」と呼ばれているうちに、次第に、自信を持って返事が出来るようになっていきました。それから、がむしゃらに気がつけば二年半。

 ある日、多忙の星川さんが久しぶりにパセオを訪れて言いました。
「いいお店!店長のお店ですよ!すごいじゃないですか!こんなお店、他にないですよ!」
 いつのまにか、このお店が本当に私の居場所になっていました。走馬灯のように、お客様のお顔だったり、スタッフの顔、お嫁に旅立っていった雑貨たちが思い起こされました。
 とはいえ、がむしゃらにやっていく中で、正直しんどすぎて投げ出したくなることもあったけれど、その度に前を向きなおせたのは、やっぱりお客様の「また来ます」の言葉と笑顔が日々あったからでした。


 2022年9月30日、パセオ閉館。ブラウンブックス&ヴィンテージは、パセオでの営業を終えました。

 雑貨に目をきらきらさせて店内を歩くお客様。お客様と雑貨への愛を語り合うのが楽しくて、どっちのイヤリングの方が似合うだなんて真剣ににらめっこしたり、道行く人に驚かれながら大きな家具をお客様と協力してお車まで運んだり。語りきれないほど本当にたくさんの思い出が詰まったパセオでの二年半でした。

 「いいお店」だと言うなら、お客様やスタッフみんな、関わっていただいた全ての方のおかげでした。こんな素敵なお店で店長をやらせていただいた時間は私の一生の宝物です。本当に、ありがとうございました。

 さぁ、パセオを出たブラウンブックス&ヴィンテージ。まだまだ止まりません。

 またお会いしましょう。

 

パセオ店店長佐藤、あらため後藤

※「移転の挨拶」に加筆修正を加えBrown Page版にしました

  • title
    珈琲道中
  • date
    2022年10月19日

或る人問ふ。珈琲道中とは何ぞや。答へて曰く、何でもなし、唯の珈琲好きの膝栗毛なり。

ぺペンペンペンペーン

珈琲が好きで知り合った友人がいます。

北の街、違う喫茶店で働いていた二人。縁あって知り合い、その後偶然、同じ時期に南の方へ移住。それから私はまた地元に戻ったけれど、彼女は今もその土地で生活を続けています。

同じ日本とはいえ、スコールもあれば椰子の木も生えている。地名、方言、微妙なイントネーション、スーパー、朝の情報番組、新鮮なことばっかり。

「珈琲が好き」「B型」という共通点はあれど、仲良くなってそんなに時間も経っていない。そんな私たちが初めての土地でした珈琲をめぐる珍道中は、本当に楽しいものでした。

列車で喫茶店に行くにも「薬院てなんて読むの?」「それよりそこに大きい神社があるから寄って行こう」

知らないものばっかり、面白いものばっかり。目についたところはどこでも立ち寄ってみました。

もう一つの共通点は「直感で生きる」

興味のあるものを見つけると動かずにはいられない。逆に計画を立てるとあんまり上手くいかない。でも上手くいかないのもそれはそれでまた面白い。

全然知らない街の市場にある珈琲屋さん。魚の匂いを通り抜けてたどり着きました。もうそのシチュエーションだけで最高でした。マグカップになみなみ注がれた珈琲の味も最高。

大きなお濠のぐるり、運動コースの向かいにあるスターバックス。マラソンをする人、ベビーカーを押す人、部活動の生徒達。珈琲の香りと自然がいっぱい、こんな環境で部活できるってどゆことよって見てるこっちが勝手にいい気分。

珈琲のレジェンドのお店では興奮を抑えきれず、小さな声で熱く語り合いました。

うさぎカフェを探して歩いていただけなのに、スラム街のようなところに迷い込んだこともありました。

自分たちがどこにいるのか、場所も時間もわからない感覚になったこともありました。

小さなアパートで長ネギを切って鍋をしました。「え、緑の部分って入れていい?」そんなどうってことない会話。そのあと、彼女が珈琲を淹れてくれた手つきと真剣な表情は今も思い出せます。

二人は生きる感覚が似てる。

住む場所が違っても、頻繁に連絡を取らなくても、これから先の道、どこかでまた一緒に何かをする。

多分人に頑張っているとか言われるのはあまり好きじゃないその子は、自分のペースで、納得のいくやり方で日々を過ごしている。

今、自分たちは人生のどのへんにいるのやら、何をしているのやら。弥次さん喜多さん珈琲道中。

あの日寄った神社では「これからも一緒にたくさん珈琲の旅ができますように」と絵馬を書きました。

また会う日まで、お互いのどんな一日にも、珈琲が味方でいてくれるでしょう。

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taiami