Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    ある母ちゃんの珈琲記 vol.3 冷めたコーヒー年末編
  • date
    2022年12月30日

師走の忙しい時期にゆっくりこのコラムを読んでいる人も少ないのではないかと勝手気ままに書きはじめています。

私は十年前にBBCで働いていました。今は家で小さな子供達との時間を過ごしています。

「洗濯も掃除も何にもしなくていいから、子供が危なくないように目を離さないでしっかり見てなさい」という祖母の教えどおり、子供一色の毎日です。とにかく家事以外は子供と遊びまくりの日々です。

BBCで働いていた頃は仕事をやめてずっと家にいるなんて考えられませんでした。仕事が大好きだったから。

でも子供が産まれてみるとめちゃめちゃ可愛くて、そして育児は仕事と同じように、日々ワクワクとヘトヘトと変化の連続で、自分の時間のなさは仕事以上。(大変さを比べる話ではないけれど)

スマホで調べものをしたり、トイレでぼーっとするたった十分の時間もないし、一服しようと淹れたコーヒーはほとんどがそのまま放置され冷めていきます。それを埋めるのは「お母さん見て」「お母さん聞いて」「お母さん遊ぼう」の声。

ゆとりのある時はいいけれど、余裕がないと怒ってしまったり、「早くしなさーい!」「着替えなさーい!」急がせてしまいゴメンナサイ。

そう怒鳴る自分は朝の支度をしながらまだパジャマ姿だったりして、説得力ゼロ。

自分の時間がほしい、という気持ちは子供がひとり増える度に消えていきました。どんどん大きくなる彼らとの時間は、先の自分が振り返るときっとあっという間で、ひとりの時間なんてこの先いくらでもあるんだと。

休憩時間は十分とれれば充分。傍らにコーヒーがあるなら満充電です。

BBCで働いていた頃の、仕事の動線や在庫確認、優先順位、スタッフの仕事分担、お客さまの気持ちの考え方などは、家事動線や子供のお手伝いの分担などにそのまま大いに役立っていて、形は変われど同じ「仕事」として全く変わりません。

あの時から十年分、歳を重ねました。

住む場所や環境も変わりました。

相変わらずお金もないです。

でも、BBCにいた頃と同じように、目の前の大切なものに馬鹿正直に向き合っていられるのは、とても幸せなことです。

冷めたコーヒーは、今を表す愛おしいコーヒー。

とにかく私はコーヒーが大好きです!BBCが大好きです!

来年もいい年になりますよう!これからも変化を恐れず、進化をやめないBBCのことをどうぞよろしくお願いします!

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Taiami

  • title
    ピザトースト
  • date
    2022年12月12日

モーニング娘。になりたかった。


センターはゴマキに譲るとして、低身長を武器にミニモニ。の5人目のメンバーに選ばれるところまではイメージがついていた。


幼心にその夢を諦めたのは、いつだったのだろう。思いのほか身長が伸びてしまっていたあの日か、学芸会のヒロインオーディションに落ちたあの日か、はっきりと覚えてはいないけれど。

 
モーニング娘。に憧れた理由の一つである、デビュー曲の「モーニングコーヒー」。曲はもちろん、衣装があまりに魅力的だった。黒のタートルネックのセーターと、赤いタータンチェックのミニスカート。その組み合わせが好きすぎて、当時遊んでいたリカちゃん人形は大体同じ格好をしていた。

月日は流れ、堅実に真っ直ぐ歩いて来たと思った道をいざ振り返ると、山あり谷あり、お酒も誘惑もたくさんありな、うねうねに曲がった道ができていて笑ってしまう。飽き足らず二日酔いで便器を抱え込むような私を見て、もう酒は十分だろう、というお告げなのか、20代も後半にして、コーヒーの美味しさに気づいてしまった。

思い出されるのは、あの曲。晴れてコーヒーが飲めるようになった私の今の小さな夢は、時間が止まったような古い喫茶店で、お気に入りの洋服を着て、モーニングコーヒーを飲むことだ。

1人でも別にいいけれど、曲の中では「モーニングコーヒー飲もうよ、2人で」と歌っているから、そこは忠実にいこう。無理やり向かいに大事な人を座らせて、あつあつのブラックコーヒーを少しずつ飲みながら、なんてことない話をするのだ。あぁでも、せっかくなら朝ごはんも食べたいなぁ…なんてわざとらしく言いながら、焼き立てのピザトーストを頼もう。トマトの香りが食欲を唆るピザソースの上には、こんがりと焼き目がついたたっぷりのチーズ。サラミの旨味、たまねぎとピーマンの苦味が程良く効いていて、どこを食べても美味しくて、ぜいたく。


「コーヒーよりピザトーストが食べたいだけじゃないの?」と向かいから鋭いつっこみが飛んできそうだが、コーヒーとピザトーストと古い喫茶店…相性抜群なのだからしょうがない。



タートルネックのセーターと、タータンチェックのスカート。静かな店内には、ナイフとフォークがお皿に当たって金属音が響く。それすらも心地いいと思う、ゆったりとした時間が流れる。喫茶店の窓から見える出勤中のサラリーマンを横目に、少しの罪悪感と優越感を感じながら、小さく切り分けたトーストを澄ました顔で一口。

 
頭の中では、もし今、モーニング娘。になれるとしたらどうしようかなぁ…なんて、全く意味のないことを心配している。
  

 



BBC staff 渋川