Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    いつのことだか
  • date
    2023年03月20日

「いつのことだか おもいだしてごらん

あんなこと こんなこと あったでしょう」

こんな歌を歌って息子が幼稚園を卒園しました。

先生と園児の掛け合いの歌詞に、親も、また先生も涙涙。通い始めた頃にはぶかぶかだった園児服は体にぴったりになり、卒園証書を片手に壇上から戻ってくる子供たちの笑顔は、そんな感動や寂しさよりも希望が似合う一日となりました。

子どもは、大人が教えなきゃってするよりも、もうすでに大人たちの日常の姿をよく見ている。教えなきゃ、じゃなくて見られている、この生き様を笑。そして真似する。

思い出すのは、子どもたちと外出して帰宅するとテーブルの上にポツンと置いてあった、ホットの缶コーヒー。夫が仕事の合間に置いていったもののようでしたが、見つけた子供たちと開けちゃおっか!と盛り上がり、みんなで一口ずつ回し飲み。ミルクと砂糖の入った生温かいコーヒーは、なぜだかすんごく美味しくて、あっという間に何周もして空っぽになりました。

「もっと飲みたーい!」という子どもたちと「また大きくなったら一緒に飲もう」と約束したあの日。

最近息子がまた「コーヒーを飲んでみたい」と言うので、カフェインレスをほんのすこーし、それからお砂糖とミルクをたっぷり入れて作りました。結構真顔でうまいという笑。

こうして少しずつ、いや、すごい早さで大きくなるんだなぁ。

コーヒー淹れてあげる!とインスタントコーヒーの粉をカップの傍にめちゃめちゃにこぼしていたり、ペーパーフィルターをドリッパーにセットしてくれたり、コーヒーメーカーのボタンを押したがったり。

お湯はまだ危ないと注意する。

でも本当はなんでもやってみたいことはやらせてみたい。

なるべく手は出さないけど目は離せない…

その間のところが、もとは適当な私にとっては神経を使うところです。

笑いながら、怒りながら、学びながら、一緒に一日一日過ごしていく。いつかこんな日が

いつのことだか おもいだしてごらん って

遠くキラキラした粒になって、みえる時が来るのだろうか

そんなことはお構いなしで、子どもたちはもちろんいいのだけど。

「おおきくなったらおかあさんといっしょにコーヒーのむ!」

とっても嬉しい約束、楽しみにしているね。

その頃はヒゲ面のおっさんになってても。

-44-

Taiami

  • title
    柱のねずみ
  • date
    2023年02月19日

SNS最盛期の昨今、ひっそりとお送りしているこのコラムを読んで下さっている皆さまは、「BBC歴」どれくらいでしょうか。

スタッフの名前も顔も全部わかる!なんていう常連の方から、実はまだ行ったことない…という方までいらっしゃると思います。

かくいう私も、実はまだまだ歴の浅い新米。15年以上続く長い歴史の中の、1ページのはしっこにもお邪魔できないくらいです。

初めて訪れたのは、2年程前の夏だったと思います。古びたビルの3階。初めて見るレベルの急な階段を前に、「なにこれ!?いま地震きたら私たち終わるよね?」と友人に話したのを覚えています。

一抹の不安を抱えながらたどり着いた先は、私が思う「かわいい」を詰め込んだような、ドンピシャのお店でした。

狭い店内に、コーヒー豆やクッキー、食器が並んでいて、思わずキョロキョロと辺りを見渡してしまうような、端から端まで魅力が詰まった空間。奥にあるカフェスペースは大きな窓が開放的で、陽の光にあたってきらきらと輝くレモネードを見るだけで、うんと涼しくなったのを覚えています。

まさに、お気に入りを詰め込んだ屋根裏部屋。隣の柱にねずみの絵を見つけました。頭の中で想像する、こういうのが好きだな〜という漠然としたデザインを具現化したような場所に、ついに出会ってしまいました。あの時の高揚感は今でも忘れられません。

場所は「和田ビル」。その3階にある、コーヒーの匂いが染み付いたちいさなカフェでした。

    

その後、カフェスペースは現在の店舗へと移り、ご縁があり、今度はスタッフとして狭い階段を上がる日がやってきました。和田ビルほどではないですが、またも急な階段です。和田ビルにはその後姉妹店の雑貨屋が入りましたが、こちらもこの度カフェと同じ建物へ移ることに。和田ビルとBBC、ついにお別れです。

和田ビルで勤務していたスタッフや、足繁く通って下さっていたお客様。ファンの1人だった私の中にも、たくさんの思い出があります。

「出会ってしまった!」と衝撃を受けたあの日のときめきを忘れずに、私は今日も変わらず、狭くて急な階段を上がります。

今頃あの屋根裏部屋は、今までの活気が夢だったかのように、しーんと静まり返っているのでしょう。そう思うと寂しさがつんと来ますが、今にも飛び出してきそうだった柱のねずみだけは、やっと好き勝手できると喜んでいるのかもしれません。

staff 渋川