Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
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    挽きたての香りを楽しむなら…
  • date
    2023年05月20日

コーヒーの香りを最大限に楽しむにはやはり焼き立て・挽きたての豆を使うのが一番でしょう。

しかしそんな私も何かとバタバタしがちな日常で、実はコーヒーは粉で買っています。

理由はコーヒーを飲むまでの手順がとにかく早くて簡単だから。毎日大好きなコーヒーを飲み続けたいから、手間よりも続けるために簡単な方を選んでいるという感じです。

粉で買うことのデメリットといえば、劣化が早いこと。コーヒーは生鮮食品だとよく言われますが、豆は挽いた瞬間から劣化が始まります。

焙煎したコーヒー豆に含まれていた二酸化炭素は、粉にすると最大で70%が失われるそうです。その二酸化炭素は、コーヒーの劣化要因である水分や酸素から守ってくれているのですが、粉にするとその効果は短時間でなくなってしまいます。その際、コーヒーの香りの成分も一緒に逃げていってしまいます。

数日間で飲み切るならそこまでの影響はありませんが、やはり香りを楽しみたい場合は挽きたてというのが最低限のハードルのようです。

豆で買うのが大事なことがわかったら、家で飲むときはそれをどうするのか?

もちろんご存知の方も多くいると思いますが、豆を挽くのにコーヒーミル(コーヒーグラインダー)というものを使うわけです。これでコーヒーを淹れる直前、お湯でも沸かしている間に挽く。

コーヒーミルには種類があって、豆を挽くところの構造からロールグラインダー、フラットカッター、コニカルカッターブレードグラインダーの四つに分けられます。

それぞれの個体によって差があるので、自分に合ったミルを選ぶ必要があります。

予算、使用頻度、粉砕速度、設置スペース、手入れのしやすさ、安定性。

私は往年のコーヒーラヴァーである祖父から譲り受けた、ダイヤル式のコーヒーミルを持っているのですが、優雅にキコキコ音と香りを楽しめていたのはぶっちゃけはるか昔。今は全く時間が持てず、最初に言った通り粉です。

専門店で使われていたかっこいい臼式のもの、小さな設置スペースに置けるフラットカッター、ちょっと値段はするけど微粉のつかない最新式のミル…。

何か今のスタイルに合ったいいミルが欲しくなってきたこの頃です。

参考 コーヒー「こつ」の化学 石脇智広

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Chihiro Taiami

 

 

 

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    庭師と木のコーヒー
  • date
    2023年04月21日

一人暮らしで気楽にやっていた頃はいつもその友人の家にいた。

その子が結婚してアパートからマンションに引越し、旦那がいても、子供が産まれても、それは変わらなかった。結婚しても旧姓で呼ぶし、好きな時に出入りし、そこから仕事に行き、朝はねぐせ頭のまま、淹れてもらったコーヒーを飲んだ。面倒くさいから彼女のお母さんが地元から来て泊まった時に使ったという歯ブラシで歯磨きをした。

当時の私は「テミヤゲ」という習慣も知らず、ミスドを買って行ったら割り勘するもんだと思っていた。

赤ちゃんを寝かしつけに別室に行った彼女を見送り、借りたパジャマでくつろぎ龍が如くをやってストレス発散をしていた。

周りより少し早く結婚し子供を産んだ彼女は、「自分は別の国に行ったみたいだ」と言っていた。多分遊び盛りの友人たちと比べて少し寂しい気持ちの、悩みのようなものだったと思うのだけど、私はちんぷんかんぷんで、白いダイニングテーブルを挟んで、コーヒーを飲みながら「ふーん」としか思わなかったし言わなかったと思う。

時間は遡って出会いは高校だった。

わりとクセの強い私の父と、同じくらいクセの強い彼女の父が知り合いで、社交辞令のような感じで話しかけたのがきっかけ。思春期特有の病んでる感じとか、いくえみ綾の漫画や、古着屋とか、そう言うものを共有してダラダラ来たらこうなったという感じだ。

彼女といることで私は「さらけだす」という生き方を覚えた。別に彼女に見せてといわれたわけでもないし、そうしようと誘われたわけでもない。「飾らない」とか「自然体」ともちょっと違う。例えて言うならその辺にただ木が突っ立ってるのと同じ。だから、間違ってちゃんとしようとしてるところを見られると逆に恥ずかしい。木が、「私、木なんですよ」と主張しているようなものだ。

おかげで彼女は私の人生の節目節目に影響しまくっている。

人間関係もそうだし、仕事もそうだし、コーヒーを好きになったのもそう。節目節目で馬鹿みたいにさらけ出している時に、風が吹いて大事なものが私の中にひょいと入ってくる。

多分あの朝飲んでいたコーヒーのカップが白かったから、私は白いカップで飲むのが一番リラックスして美味しい。そして隣だったり、向かい合ったりしていた彼女の目が、いつも私を見透かして、受け入れてくれていたからだと思う。

宅飲みで悪さした次の日の朝は、みんなが帰った後しれっと隠していたつもりだったけど、コーヒーを淹れながら、やっぱり彼女は見透かしていた。

そんな感じで、見透かし受け入れながらも、それとなく私を剪定していく庭師のような力が、彼女にはあるのだろう。

前世では本当に、庭師と木の関係だったのかもしれない。

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Taiami