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4プラ - date
2022.02.05
年: 2022年
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太陽の恵み、水の恵み - date
2022.02.04
一杯のコーヒーがカップに注がれるまでには、さまざまな過程があります。
生豆に熱を加えて焙煎し、茶色くなった豆を、コーヒーミルで小さく挽いてお湯で抽出する。なんとなくこの辺りは自分でできたり、イメージしやすいかと思いますが、その「生豆」ができるまでに、たくさんの太陽や水の力を使わせてもらっていることをご存知でしょうか。
コーヒーの原料となる、コーヒーノキ。
アフリカ大陸原産の常緑樹で、熱帯産。寒さに弱く、ほとんどが赤道近くの熱帯から亜熱帯の地域にかけて育てられています。もともと標高が高い産地の森の中で、背の高い樹々の陰に生えている植物のため、強い日差しや暑さに弱く、年間を通じて15〜25度になる標高1000〜2000mの高地に育ちやすい植物です。暖かい気候がいいけれど暑過ぎてもだめ、と意外とデリケート。
コーヒーノキは、地域にもよりますがほとんどが雨季のはじめ頃、ジャスミンのような芳香のある真っ白な花を咲かせ、そのあと6〜9ヶ月かけて「コーヒーチェリー」と呼ばれる赤い(品種によっては黄色い)サクランボくらいの大きさの果実をつけ、熟していきます。果肉は肉厚ではありませんが、甘みがあり、収穫を手伝う子供たちが口に放り込む姿もみられるそう。この果実の中に、通常、半球形の大きな種子がふたつ、向かい合うように入っています。
これが、コーヒー豆です。
農園で収穫された果実、コーヒーチェリーは集積場に集められ、その中からコーヒー豆だけを取り出す工程にかけられます。コーヒーチェリーの中のコーヒー豆は、「パーチメント」という薄い殻で覆われていて、この殻を剥がすと中から薄緑色の生豆が出てきます。
この生豆の状態にする工程を、「精製」といいます。精製にはいくつかの方法があります。
主流の一つが乾式ーナチュラルと呼ばれ、ブラジル、エチオピア、イエメンなどで古くから行われているものです。収穫した果実をそのまま高い乾燥棚やマット、またはパティオと呼ばれるコーヒー豆の乾燥場(コンクリートやレンガでできた広場)の上で約15〜35日間天日干しにます。たっぷり太陽を浴びせ、水は使いません。カビを防ぐために乾燥させている間は広げた豆を頻繁にかき混ぜたり、均一に乾燥させるため太陽の向きに合わせてコーヒー豆の広げ方を変えたり、雨が降りそうな時に濡れないように調整したりする作業が必要になります。
もう一つの主流が水洗式ーウォッシュトと呼ばれるもの。たくさんの水を使います。インドで発明されたといわれています。コーヒーチェリーを機械にかけて果肉を取り除いたあと、種子についたパーチメントのさらに外側にある、ぬるぬるとしたミューレージという粘着性のものを取り除くため、大きな水槽に豆を漬け定期的にかき混ぜます。発酵後、豆をすすぎ洗いし、パティオや高い乾燥棚に置き、天日もしくは機械式ドライヤーで乾燥させます。水の便のいい産地で行われます。
他にも、高性能の機械が出てきたことで可能になった、環境にも優しいナチュラルとウォッシュトのいいとこどりのセミウォッシュトや、ブラジルで開発された、豊富な水が確保できない地域でも処理ができるパルプドナチュラル(エコウォッシュト)、インドネシアのスマトラ島で古くから行われている、二度乾燥させることが特徴のスマトラ式などがあります。
このように焙煎豆の前段階である生豆ができるまでには、栽培の段階はもちろん、処理の過程でも、水や太陽、たくさんの自然の恩恵を受けています。
精製を終えた後は、人手による細かい「選別」という段階があり、異物を取り除いたり、豆のサイズ別に分けたり、色のおかしいものを取り除いたりします。自然と人の手の果てしない作業を経たコーヒー豆が、ここまで届けられることを思うと、目の前の一杯がさらに美味しく感じませんか?
参考:「珈琲の世界史」丹部幸博
「コーヒー「こつ」の科学」石脇智広
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chai
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寒い季節のアレンジコーヒー - date
2022.01.25
まだまだ寒い日が続きそうですね。先週のサザエさんでは、最強寒波の予報に備えて巣ごもりを計画。前日にみんなで食材を買い出しに行ったのですが、子供たちがカゴいっぱいのお菓子を持っていくと「ひとりひとつでしょ!」と怒られ、後ろで酒のつまみを腕いっぱいに抱えた波平とマスオが「はーい」としょんぼり返事。当日の朝は布団から出ずに漫画を読んでいるカツオとワカメがまた怒られ、波平の部屋に行くと布団の中で同じ格好で新聞を読んでいるという。いやーいい回でした。
そんな巣ごもりにおすすめのアレンジコーヒーをいくつかご紹介します。
●カフェ・オレ
アレンジコーヒーの定番。お家にある材料ですぐに作れます。牛乳がほのかに甘い、優しいコーヒーです。こつは牛乳に負けない、中煎りから深煎りのコクのあるコーヒーを使うこと。フランスでは、カフェオレがたっぷり入るカフェオレボウルという両手で包み込めるくらいの大きさの器に入れ、パンなどを浸して食べれられることも多いそうです。
材料
・コーヒー 200ml
・牛乳 150ml
※目安はコーヒー4:牛乳3の割合で
作り方
1、コーヒーを淹れる。いつもより少し濃いめでも◎。カップに注いでおく。
2、鍋で牛乳を温める。膜ができる前に火を止め、コーヒーの入ったカップに注ぐ。
●蜂蜜ジンジャー・ラテ
代謝をあげてくれるショウガを使ったコーヒーは冬にぴったり。ショウガとコーヒーの苦味と牛乳がうまく調和します。スパイシーなアレンジには軽めでフルーティな豆がおすすめです。
材料(一杯分)
・コーヒー 70ml
・牛乳 70ml
・蜂蜜 15g
・おろしショウガ又はジンジャーパウダー 少々
作り方
1、コーヒーを濃いめに淹れカップに注ぐ。
2、鍋に牛乳、蜂蜜、ショウガまたはジンジャーパウダーを入れて火にかけ、弱火で牛乳が沸騰しない程度に温めながら、泡立て器で撹拌する。
3、コーヒーを注いだカップに2を入れる。お好みでジンジャーパウダーをトッピング。
●コーヒー・エッグノッグ
卵黄、牛乳、生クリーム、スパイスを使ったエッグノッグにコーヒーを加えることで、甘さとほのかな苦味が調和したコーヒー。豆はバランスのいいブラジルやコロンビアがおすすめです。肉料理などによく使われるナツメグを入れることで、卵黄の生臭さが消えてマイルドに。
材料(一杯分)
・コーヒー 120ml
・グラニュー糖 10g
・生クリーム 10g
・牛乳 30ml
・卵黄 1個分
・ナツメグ粉 少々
作り方
1、カップに卵黄を入れて溶く。
2、コーヒーを淹れる
2、鍋に生クリーム、牛乳、グラニュー糖を入れて弱火で温め、クリーム状になり少し照りが出るまで混ぜる。
3、1のカップに2を注いでスプーンなどで卵黄としっかり混ぜ合わせてから、コーヒーを注ぎ、ナツメグ粉を振りかける。
●アイリッシュ・コーヒー
アイルランドの空港で、旅客機の乗客の冷えた体を温めるために考えられたというコーヒー。アイルランド名物のアイリッシュウイスキーをベースとしています。生クリームと砂糖の甘さでウイスキーの風味が引き立ち、なんだか見た目も幸せな気分になるコーヒーです。砂糖は初めから全て溶かさず、徐々に溶けていくのを楽しむのがおすすめです。コーヒーは、クセが少なく香ばしいものが◎。
材料(一杯分)
・コーヒー 120ml
・アイリッシュウイスキー 20ml
・ザラメ 15g
・生クリーム(泡立てたもの) お好みの量で!たっぷりでも!
作り方(一杯分)
1、温めたグラスにザラメを入れる。
2、コーヒーを淹れる。
3、1にアイリッシュウイスキーを入れ、コーヒーを注ぐ。
4、生クリームを浮かべる。
※アイリッシュウイスキーがない場合、ラム酒などでも美味しいです
コーヒーはもちろん直前に淹れるのが美味しいですが、色々なアレンジコーヒーを試してみたい場合、深煎りの豆でおとしたアイスコーヒーを多めに作り置きしておき、作る直前に温めてもいいと思います。ちなみにサザエさんの巣ごもりでは、昼間に酒を温めようとしてサザエに怒られていた波平とマスオでしたが、最後はみんなでほっこり甘酒を飲んでいました。温かい飲み物はみんなを笑顔にしますね。
この冬お気に入りの一杯が見つかりますように!
参考:日経おとなのOFF「おとなのためのコーヒー案内」
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chai
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伊丹十三とコーヒー - date
2022.01.10
映画俳優、デザイナー、エッセイスト、雑誌編集長、翻訳者、CMクリエイターなどさまざまな分野で活躍し、料理やレタリングの腕も一級。1984年、五十一歳で「お葬式」で映画監督としてデビュー。主な映画作品に「マルサの女」「「ミンボーの女」「スーパーの女」などがあります。
さてこの人物は?
伊丹十三の歯に衣着せぬ文章や感性は、おそらく何十年経っても古くならない、そういうアンテナに集まってきているものだと思います。このお洒落なおじさんは、めちゃくちゃ素直に、正しい目で物事を吸収して、それを時に辛口で挑発的に、わざわざみんなに親切に教えてくれようとしている。いいものはいいと言い、ダサいものはダサいと言う。そして「これはすべて人から教わったことばかりだ。私自身はーほとんど全く無内容な、空っぽの入れ物にすぎない。」なんて言います。
欧州で暮らした際は、日本で食べ慣れていたパンとの違いに衝撃を覚えたり、アボカド(アヴォカード)やカマンベールチーズや、大きな木のボウルにドレッシングから作り、とれたての野菜をザクザク入れていく、そんなサラダなんかを全身で味わい吸収していきます。日本でも、蕎麦屋の店主に話を聞いた鰹節の量に驚いたり、祖母の梅干しや伽羅蕗の作り方を詳細に思い出そうとしていたり。やっぱり興味のあることはとことん本物を見たい!味わいたい!そう思わされます。また、食だけではなくファッションやマナーなどでも、幅広い知識を得ていきます。
そしてコーヒーの話をしている章。ちょっと長いですが。
ーそこへゆくとヨーロッパの子供なんかは、まだしあわせだと思う。今でも昔ながらに、彼らはコーヒーの豆を挽く音で目を覚ますことができるからだ。そうして、ヨーロッパではだれも「コーヒーは匂いがとびやすい。だから新鮮な味と香りを愉しむためには、コーヒーは必ず飲む直前に必要な分量だけを挽くようにいたしましょう」などと絶叫したりしない。つまり必要がないのである。常識がいまだに常識として命を保っている。つまりそれが文化というものであろう。
さてコーヒーを挽くにはコーヒー・ミルというものを使う。木の箱に鉄のハンドルがついていて、箱の上の蓋をあけてコーヒーの豆を入れ、ハンドルをがりがり回すと挽かれたコーヒーが下の引出しにたまる。なんとなく鰹節を削るのと趣が似ているではないか。
大きさはさまざまで二人用くらいから、ずいぶん大きな大家族用みたいなのまである。電気で動くやつもあるが、自分の手で、ハンドルから伝わってくる豆の砕ける乾いた感触を味わうのが愉しいのである。
日本人はずいぶんコーヒーをよく飲むし、また妙に銘柄やブレンドにうるさい人が多いわりにコーヒー・ミルを持っている人が少い。挽きたてでないコーヒーを論じてみても詮ないことと、私は思うのだが。
(女たちよ! 乾いた音/1968年)
この本が出版された1960年代と言えば、コーヒーの生豆やインスタントコーヒーの輸入が自由化され、第一次コーヒーブームが到来した時代。国内初の缶コーヒーも登場しました。
個人経営の店が主流となり、寡黙な渋いマスターが淹れるコーヒーと、「ジャズ喫茶」「シャンソン喫茶」など、店主のこだわりがつまった店が人気となっていました。
そんなインスタントコーヒーについては、こんな言葉が載っています。
ーインスタント・コーヒーについては、世の中にそういうものがある、ということを知っているだけにとどめたい。世の中には、そういうものを飲まなければならぬかわいそうな人たちがいるということを知っているだけにとどめたい。ー
しかし親交のある方の話だと、実はインスタントコーヒーも結構飲まれていたそうで。
まだまだ伊丹十三を語るには何も知らないですが、留まらず、いつも驚き続けられるものを見つけていく、好奇心や面白いことへのアンテナをずっと持ち続ける楽しさを、このおじさんは教えてくれている気がします。
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chai