夏休み あー夏休み 夏休み
夏の青空を見上げて、一句読みたくなった。祖父が俳句好きで、今日みたいな暑い日に裏の公園で蝉が鳴いているのを聞きながら、隣に座って詠むのを聞いていた。俳句ってその時の感情がばーっと出るようなものなのかな。
というわけで、私は今、夏休み一色の毎日だ。
我が家は住宅街の一番はじの方にある。隣には畑が広がっていて、青い空と白い雲、緑の畑のコントラストが、夏は本当に美しいと思う。
今はネギ畑が広がっているけど、時期によってマリーゴールドだったり、ひまわりだったり。遮るもののない空間に、心と体もどこまでも伸びていく気がする。
以前は自分の時間のない時ほど、少しでもやりたいことをやる時間を作りたいと、夜中に頑張って起きたり、隙間を見つけては家事を詰め込んだり、何かしようとしていた。
でも今年の夏は、子どもたちと同じ、いや子どもの頃と同じ「夏休み」を過ごそうと決めた。
畑、虫捕り、水遊び、洗濯畳んで、昼ご飯。そこそこ家事は家族みんなで振り分けて、あとはどうとでも動けるように。この余白に、なんだかんだイレギュラーなことが入ってくるから、結局はそれで帳尻が合って一日が終わる。
「時間は未来から過去に流れている」
そんなことを、友人が言っていた。
彼女は今、セントルシアという南米の島にいる。こちらは夜の十時。向こうは朝。彼女の背景に映る部屋は、濃い黄色の壁で、カメラを回してベランダの窓から植物が生い茂っている景色を見せてくれた。鳥の鳴き声もかなり大きく聞こえた。知り合いの店でネイルをやってもらったがいまいちだったとか、そんな他愛もない話をしていたっけ。日本を発ってからずいぶん髪が伸びて、綺麗になったなと思った。
遠くて近い電話を切ってから、彼女が不意に言った「時間」のことが、すごく面白いと思って考えていた。
ただ押し流されるように過ごしている時間だけど、タイムマシンのようにそこをぴょんぴょん移動することは可能なのだろうか。
「今」で解決しないことを、過去や未来にひとり時間旅行をして、見る場所を変えて納得するまでじーっと見てみたり。
かっこ悪いこと、失敗したこと、意味ないようなこと、そんな一瞬は、他人からの視点ではきっと矢のように通りすぎていく。みんなそれぞれ自分のことで忙しいから。
多分、時間は一直線上ではないんじゃないかと思う。
「今」は確かだけど、過去はフワーッとしてるし、未来には遮るものはない。
青空と白い雲と夏休み。
心を込めて淹れたコーヒーの香り。
遮るものはないから、
のびろどこまでも。
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Chihiro Taiami