Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。

年: 2021年

  • title
    コーヒーはどうやって選ぶ?
  • date
    2021年10月20日

豆を選ぶときや、お店でコーヒーを飲むとき。

コーヒーは香りの飲み物と言われていますが、茶色い豆になる前の、生豆の段階では味も匂いもありません。焙煎という、熱を加える段階を経て、ようやくあの脳みそを刺激する香ばしい香りが出てきます。

生豆にどの程度熱を加えるかによって、コーヒー豆の色や味も変わります。加熱の程度を表す目安として、日本では浅煎りから順にライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストと区別されます。

焙煎の時間が長くなるほど深煎りになっていき、色は黒く、味は酸味が弱まり苦みが強くなっていきます。なので、苦みの度合いで豆を選ぶ時は、この「焙煎度」が目安になります。

ただローストの呼び方は、そのお店の焙煎士が豆の色を見て「これだ!!」と決めているので、あるお店のシティローストが、別のお店のフレンチローストよりも深煎りということもあります。

またローストだけでなく使う粉の量や、豆の挽き方、器具、お湯の温度などでも、濃い・スッキリなど変わります。

それでは産地によってはどんな違いがあるのでしょう?

例えばブラジルは300年のコーヒー栽培の歴史をもち、世界でトップのコーヒー生産・輸出国です。品種も高品質のものから、病害に強いものまで幅広くあります。多少の苦味と香りが特徴で、丸みをもった味は、よくブレンドのベースとして使われます。

コロンビアは、ほとんどが標高1000メートル以上の山の急斜面で栽培されており、小規模農園ながらも、他のコーヒー生産国のモデル国です。マイルドですっきりした飲み口、適度な酸味があり、風味はチョコレートやフルーツティに例えられます。

グアテマラは火山が多く、有機質に恵まれた火山灰土壌や、水質豊富なカルデラ湖が多くあり、世界のコーヒー栽培の宝庫と言われています。場所によって少しずつ違った風味があり、特に酸味は上品ですっきりしているものから、厳しいまでに力強いものまであります。スモーキー、スパイシー、花の香り、時にはチョコレートの香りなどのニュアンスに例えられるものもあります。

コロンビア、グアテマラもともに300年近い栽培歴史を持ちます。

産地は国の名前だけでなく、港(例・モカ)や山(例・キリマンジャロ、アンデス)などの名前がついているものもあります。ロースト、産地、どちらも豆の名前に使われていることが多いので、参考にしてみてくださいね!

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chai

  • title
    ちっちゃな親友
  • date
    2021年10月14日

喫茶店で働いていた時、出会った女の子がいます。

小さな店だったので、カフェ業務とコーヒー豆の販売を、平日はだいたいひとりでやっていました。一対一で接客をしていると、自然とお客さんとも距離が近くなり、私がブログに書いた本を自分も好きなんだよ、と声をかけてくださったり、話が弾みました。

小さな常連さんも何人かいて、初めてのおつかいで、頼まれたコーヒー豆を買いにきてくれた男の子もいました。男の子越しに、窓の外でお母さんがこちらに会釈してくれた光景は、今も残っています。

その女の子はおばあちゃんと一緒にやってきました。膝小僧には大きな絆創膏。年齢のわりに小柄で、ショートカットの、日に焼けた可愛いらしい顔をしていて、いたずらっぽいけど賢そうな目をクルクルさせて、大人のことなんてお見通しといった感じでした。アイスココアを飲んで足をぶらぶらさせていました。その日はおばあちゃんの陰に隠れてあまり話さず帰りました。

次に来た時、こっそり集めているシールを見せてくれました。だんだん、遊ぼう、と言ってお客さんのいない時に店の前のお花を摘んだり、お昼休みに、二人でフリスビーをやったりしました。雪かきを手伝ってくれたり、泥だんごを作ったり。冬休みの自由研究で作った羊毛のアイスクリームをお店に飾ってくれたこともありました。私の貧しいお弁当を見て、海苔で小さな顔をつけたおにぎりを作ってきてくれたこともありました。とても可愛いという感覚もあったけど、それ以上に、歳の差は関係なく私たちはきっと波長があいました。

だけどだんだん、私は仕事とその子との時間の境目が難しくなってしまいました。今は仕事中だから遊べないんだよ、とはっきり言えなかった。やんわり伝えると、その子は少し考えて「じゃあ忙しくてもお話ができるようにお手紙ポストを作ろう!」と、翌日ミッキーのお菓子の箱に差し出し口を切り抜いて、ポストを作ってきてくれました。その後も、お仕事があるから今はごめんね、売り上げ作らなきゃ!と言うと、「じゃあお客さん連れてくるね!」と、本当に引っ張ってきてくれることもありました。

その時、その子はきっと寂しかった。優しくしてくれる人を、ほっとできる居場所を探していた。誰かに喜んでほしくて一生懸命だった。

その後私は店をやめ、住む場所も変わりましたが、その子とは、おばあちゃんを通じてたまに連絡をとっていました。高校生になり、自分でスマホをもつようになると、好きな人の話や、自分の好きなことの話を教えてくれるようになりました。そしてこの夏、9年ぶりに、その子とおばあちゃんが訪ねてきてくれることになりました。おばあちゃんのおしりの陰から顔を出していたその子が、今度はおばあちゃんを連れて遊びに来てくれました。改札から出てきた19歳の彼女は、すっかりおしゃれなお姉さんになっていて、芯のある眼差しはあの頃のままでした。

今は専門学校へ通い、好きな絵やデザインの勉強をしています。夢に向かって悩むことも、今を一緒に楽しむ仲間や恋人も、若さというたくさんの宝物を抱えています。

当時10歳くらいのその子が、私が何か悩みをぽつりと言った時にかけてくれた言葉が日記にメモしてあります。

「先が見えてるっていうのはほんとに目に見えてるっていう意味じゃなくてね、きっとどこかで神様が合わせてくれてるっていう意味だから、全てにおいて、ちっちは正しい道を歩めるようにどこかで見えてるっていうことなんだ」

こんなに相手を思いやったまっすぐな言葉を、どうやったら言えるんだろう。悩んだり迷ったりした時、何度もこの言葉に助けられています。彼女は当時も今も、私の親友です。

業務用のコーヒーミルからこぼれた、コーヒー粉の匂いが充満するお店の中でパタパタと働いていた時、重いガラスの引き戸を開けて、飛び込んできたあのキラキラの笑顔をなくして、未熟な喫茶店員の回想はありません。

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chai