Coffee Column
コーヒーコラム
ブラウンブックスカフェのコーヒーにまつわる日々のコラム

Yoko Hoshikawa
ブラウンブックスカフェ/ブラウンブックスヴィンテージ店主。
コーヒーとHip Hop を愛する2児の母。札幌在住。
Chihiro Taiami
妖怪が大好きな円山店時代の元スタッフ。
4人の子供の育児の合間に当店のコラムを担当している。道南在住。
  • title
    なにげない言葉たち
  • date
    2024年01月19日

人はいろんな言葉に出会う。

愛犬がたった六歳で旅立ってしまったのは、高校生の時だった。

亡骸を抱いて、父は「ああすればよかった、こうすればよかったって思うこといっぱいあるしょ。そういうことってこれからもあるんだから。今の気持ち忘れるんでない。」と大泣きしながら函館訛りで言った。

子犬の時は可愛がっていたが、大きくなると面倒くさがってあまり散歩にも行かず、十分に愛情を伝えることもしなかった後悔はもうどうにもならない。でも、大事なものがそばにいるのは当たり前のことじゃない。犬と父が教えてくれたことは、それから一日たりとも消えていない。

友達と初めてバーに行った時、「何にもわからないんですけどどんなもの頼んだらいいですか」と聞いたら、マスターが「わからないことはこれからもそうやって素直に聞いたらいいよ。知ったかぶりしてる人には教える気なくなるからさ。」とクールに笑った。

バスの中で数分だけ隣り合わせたおばあちゃん。

私の腕の中でぐっすり眠る赤ちゃんを見て「抱っこできていいねぇ。私は、義母がずっと抱いてたから、ほとんど自分の子供を抱けなかったよ」と微笑みながら言った。

歩調を合わせて歩いたり、ぐずって抱っこしたりしながら歩いてきて、やれやれと乗ったバスだった。こうして重い思いをして抱けることは当たり前じゃないんだなと思った。

そして最後は、コーヒーの仕事に出会った時のこと。本気になれる仕事をしたいともがいている最中だった。面接で、普段コーヒーを飲んでいないことを伝えると、店長が

「じゃあまずはコーヒーを好きになってください」

と言った。この言葉は私に魔法をかけた。

「目の前の仕事を好きになる」

今もその魔法は解けていない。コーヒーだけにはとどまらず、どんな世界もそう見えるようになった。

こういう言葉は、かけてくれた人は覚えているんだろうか。多分覚えていないんじゃないかな。どや顔で言われたら、多分そこまで残らない。お互い通り過ぎるようになにげなく言ったり聞いたりしたから、すっと心の奥に届いた気がする。

これからもどんな出会いがあるかわからないけど、そんな言葉たちは、いつでも道の先を照らしてくれる、強くてあたたかな明かりです。

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Chihiro Taiami

  • title
    コーヒー、三六五日
  • date
    2023年12月30日

今年もあっという間に残り二日となりました。

三六五日、何杯のコーヒーを飲んだかな?

朝起きてすぐ、ごはんの後、仕事の合間、家に帰ってきた時、ドリップ、インスタント、自分で淹れたコーヒー、人に淹れてもらったコーヒー、お店やコンビニのコーヒー、遠出する時に車の中で飲んだコーヒー。

確実に三六五杯は越えている。

祖父がコーヒーとタバコを愛して、九十歳を過ぎ大往生したように、やはり自分にとってもコーヒーには日々の原動となる力があります。

世界には戦争や災害が起こっている地域やコーヒーどころじゃない人々もいる。そんなニュースを見て「今日も美味しいコーヒーでホッと一息つきましょう』と書くことに違和感を感じることもありました。

自分にできることは、そういう現実を忘れないで、自分も精一杯生きること。どんな環境でも、感動する心を忘れないことなんじゃないか、と思う。

コーヒーはその手助けをしてくれる。

私にとってコーヒーは、めくるめく日々を、心を、リセットしくれる存在です。だからこそ、毎日新たな感情を見つけられる気がする。

あなたにとってコーヒーはどんな存在ですか?

今年も一年つたないコラムを読んでいただき、書かせていただき、本当にありがとうございました!

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Chihiro Taiami